能面

いつだって日本人の表情はわからない。怒られた時にニヤニヤ笑うのは何故だ。泣くのが肯定されるのは何故だ。外国人にはわからないらしい。日本人の自分だって何故かわからない。


とりあえず日本的なるものの代表であり、翳りのある神秘的な日本文化を象徴するのが能かも知れぬ。理解できない日本人の表情のとりわけ微妙な表情を面にしてつけるのだから。理解しづらさ=日本らしさなのかもしれない。


彦根城の博物館には井伊家に伝わる能面が展示されており、さらには運がよければ能舞台で能を披露している。三、四千円を出して観劇に行くのには抵抗がある初心者や外国人にはまずこちらで馴染んでみるのも悪くない。


しかしまともに能を鑑賞したことのある人はどれだけいるか。ましてや舞える人などどれだけいることだか。能というのは日本的だが全く馴染みが無い。


現代の価値観からすると能面の造詣は美人でも美男子でも無い。むしろ恨みのこもった顔、冷淡そうな顔、意地悪そうな顔、皮肉っぽい顔などネガティブな表情ばかり。そんな文化も珍しくはないだろうか。面と向かってあんな顔されたらむかっ腹が立ちそうな表情でも能の唄と衣装に包まれると品と言うか格のようなものが醸し出されるから不思議だが、実は騙されてやいないか。高尚なものだと思い込まずに能面だけを眺めてみると、人間臭いユーモアすら感じてくる。


↓嫌な仕事をもらってしまった時の小生の顔


↓そんな小生に「なめとんのかい」


↓それでもやらなかった小生に激怒の上司


↓「スミマセン」と答える小生


↓旅に出た時の活き活きとした小生


↓そんな小生を温かく見守ってくれる祖父


↓そんな小生に「まったくこの子は」な母


↓そんな小生に冷ややかな嫁さん

上にもし当てはまるならばあなたも駄目リーマン

能は舞よりも声が主なのだろうか。ビブラートの効いた声色に惹き込まれた。何も考えずに漫然と歌声に耳を傾けるのも悪くない。