男の腕や手に浮き出した血管が好きだという趣味を持った女性が友人の中にちらほらいる。そういうものを理解できずにいたが、硬い岩盤に挑むように地表に隆起しながら根を張る姿に見とれながら、ああ、こういうことかと思うに至る。勝手な勘違いかも知れんが。


根が張る様は力が漲っているようで圧倒される。女性が、生命力の強い男性の徴として隆起した血管が好きなら合点がゆくのである。


根を観ていて気づくのだが、枝も同様な展開をみせる。根元から枝が広がる種の樹木なんかは実は地表を軸にしてほぼ線対称なのではないか。そんな木があれば、根の土を綺麗に取り除いて飾れば、枝と根の相似性を楽しめるかもしれない。


「病気が根が張る」なんてしょうもない駄洒落で見舞いに鉢植えを持っていくのは忌避されるらしいが、斬られて数日で茶色く変色して枯れるだけの切花よりも、根を張り巡らして葉を広げる生命力に溢れた鉢植えこそ見舞いに贈るべきなんではないのかね。自分がもらいたいのは鉢植えだ。


南方諸島の大地に気根を垂らす熱帯の樹や人工物さえ砕くガジュマルの巨樹も好きだ。盆栽でもあえて器を浅くし、根を地表に露出させてその張り具合を鑑賞して楽しむらしい。根はそれだけで芸術的だし当然昔の人もそれを認識していたのだろう。根が一面に張り巡らされた広い庭があれば良いな。