春秋山荘 蕎麦 高月

佇まい良し、接客良し、蕎麦良し、他の京料理も味良し。お気に入りの店の一つとなった。


晩夏に一度行った際には満席で食べることができなかった。それ以来、何かの祝いに再訪しようと話していたのだが、残念ながら祝えるようなことは何も起きず、仕方なくクリスマスイブに来る運びとなった。


京都 高台寺「馳走 高月」にて修業を積んだ主人が出した高月の支店で、丹波産の粉を使った蕎麦を懐石仕立てにして提供してくれる。明治3年に建てられたという滋賀の養蚕家の民家を昭和54年に移築して改装したお店は欅造りの立派なもので、映画「宋家の三姉妹」のロケ地にもなっているそうな。よくぞこんなところにと思うような、毘沙門堂の脇の渓流沿いをさらに上がった山中にある隠れ家的なお店である。こんな山荘を欲しいものだ。


広縁に面した庭の見える客間に通していただいた。畳の上に足を切った欅のテーブルと椅子を据えており、座高が低いとも思ったがどうやら庭の眺めを楽しむ為のぎりぎりの高さに調節している様子。



冷えた体を蕎麦湯と蝦芋のたいたんが温めてくれる。縞鯵や鯛、甘蝦の刺身は縞鯵の身が引き締まっており、山科でも美味い刺身が食えるものだと感心させられた。


そして目玉の蕎麦が出る。蕎麦は二八蕎麦で、大根蕎麦と山盛りの葱が盛られて出てきて、それを鴨肉の入った冷たい出汁につけて食べる。最近、「蕎麦屋にこら」のこだわりの十割蕎麦を食べたが、やはりつなぎを一切使わない分、麺が弱くコシがなかった。二八でも香りは十分だし、のど越しも楽しめるので、こちらのほうが蕎麦を食べる楽しみが大きいように思う。



蕎麦が出たので早くもクライマックスかとも思ったが、その後に酒糟の牡蠣、大根、麩の入った鍋を頂いた。牡蠣が大粒で弾力があり、酒糟の味を吸い込んでいて美味い。家庭ではなかなか利用しない食材の組み合わせを楽しめると外食する甲斐があるというものだ。


さらには鮨。鮨の味はさすがに金澤の鮨屋で食べるほどではないが、椎茸とイクラの握りや蕎麦の巻寿司など変りダネが出てきて楽しませてくれる。



かなり御腹も膨れてきたのだが、ここで白味噌饂飩が出てくる。白味噌も濃すぎず、非常に上品な味で、蕎麦屋とは裏腹に歯応えの絶妙な饂飩が楽しめる。空腹状態で真っ先にこれを食べるならば倍に美味く感じるのではないかと思う。


最後には水物代わりにみたらし団子、干芋に干柿。振り返ってみれば、蕎麦、鮨、饂飩と主役の三連弾。それぞれが別個に食べても満足できるほど美味しいのだが、なにせ炭水化物が重なるから腹の膨れ方も相当なものだ。今回は6000円のコースを頂いた。次回は2000円のけんずいや4000円のコースなど品数が少なくても十分かもしれない。



本店が鱧料理の名店だけあって、鱧を取り入れた懐石も充実している。夏の毘沙門堂へお参りついでに昼間に訪れるのも良い。


春秋山荘 蕎麦高月
住所:京都市山科区安朱稲荷山町6
電話:075-501-1989
営業:11:30-14:30(要予約)、14:00-16:30、17:00-21:00(要予約)
定休:月曜、第2・第4火曜
http://www.kyoto-kougetsu.co.jp/sobakougetsu/index.html