雪の愛宕山詣で

友人に付き添ってもらって兼ねてより登りたいと思っていた愛宕山に登った。目当ては雪山ハイキングと京都人の台所必携の品、愛宕山の火伏せの御札である。この愛宕山、京都の最高峰にして現代に至っても徒歩で2時間以上をかけて登るより参拝する手段が無い。大型バスで乗り付けられる比叡山と比べ、特別な気持ちになる。正確に言えば戦前はケーブルカーが山頂まで走り、多くの茶屋や遊園地まであったという。それが戦中に全て資材として没収され、より原始的な信仰の山となった。原始的は言いすぎか。その不便さゆえに体を鍛えたい登山好きの団塊世代の一大行楽地になった。日帰りで気軽に登れるとはいえ、遭難者も散見される山でもある。


8:17太秦天神前より清滝行きの市バスに乗る
9:00清滝駅に着き登攀開始
11:15黒門着
12:00愛宕山到着
12:30握り飯を食べ三角点を目指す
13:00三角点到着。展望良し。
13:30月輪寺到着
14:15一の鳥居へ帰着


最初の30分ほどして雪がところどころに見えてくる。雪に彩られたほうが華やかな景観になって目に嬉しい。


表参道は何合目か毎に休憩小屋があり、水分補給したり足を休めたり。参拝者の7,8割が定年を迎えた年配者で全身隙間無く登山装備で固めている。1000メートル弱の低山といえ、雪山には変わりが無くアイゼンを装着するのは常識らしい。小生は認識が甘くアイゼンを持参していなかったが、友人が超軽量自然派アイゼンを装着させてくれた。いや、かなりかっこいい。見せびらかしたいぐらいだ。この藁アイゼン、雪道でもしっかりと力を発揮してくれた。



山頂まで50丁あるが、その丁目、丁目にお地蔵さんが参拝客を見守る。風雪にさらされ丸みを帯びた表情が一層柔らかい。


夜になると吹雪くのだろう。真直ぐな杉の幹の片側に雪が張り付いたままになっている。


友人も写真を撮るのが好きで、お互いに丁度良いペースで立ち止まり、あちらこちらにカメラを向けては撮る。普段は嫁さんにいつもさっさと撮ってくれと無言の圧力をかけられるので、写真好き同士の道中はなんと楽しいことか。


愛宕神社の直前の石段は間に雪が詰まって一枚の坂となっていた。なかなかの傾斜である。これが凍ってしまうともう登れない。



初参拝の愛宕神社は予想以上に立派だった。氷点下の冷気が周辺に凛とした気配を醸し出す。




結ばれた御神籤も大気中の水分を吸収して氷の結晶を樹状に成長させていた。


御札を頂ける社務所の向かいには山小屋のような休憩所があり、中で薪ストーブで体を温め、握り飯を食べた。うまい。


今回初めての愛宕詣が冬だったわけだが、冬の愛宕詣でが一番のような気がする。人も少ないし蚊や蟲もいない。零度前後であればほどよく汗をかけてなんとも清々しい。そして何より雪に包まれると景色が美しい。こんなにも風も無く晴れた日に恵まれるならば毎年冬に登りたい。


帰りに立ち寄った月輪寺には3000回参拝記念碑が立っていた。毎日登ったとしても8,9年かかる。毎日登っているようではまともに会社勤めも商いもできないだろうし、定年してから登る頻度を上げたとしても年が年だけにやはりしんどいに違いない。達成したのは80歳だという。あと少しで達成だと思えば死ねなかろう。良い生きる張りになったことだろう。達成後には気持ちよくポックリといけたかも知れんね。愛宕山は御老人方の遊園地。40年後も自分も変わらず登っていると良いな。