新緑を浴びに茂庵へ

すぐに移り変わっていってしまう季節の中で、京都で鮮やかな新緑を捉えにいこうと思ったら頭に浮かんだのは茂庵だった。おそらく京都で一番好きなカフェだが、行く季節と天候を選ぶ処でもある。その不自由さが良いのかもしれない。



山麓の神社の鳥居前に自転車を留め、吉田山の山頂を目指す。たった100メートルを僅かに超えるほどの丘のような低山だけれども、汗ばむほどに陽気が戻ってきている。




四方が大きな窓で外の緑に視界が開かれているのが茂庵の魅力。階段を上がって左手には京都市外を緑のフレームの中に望めるカウンター席、反対側には4人がけのテーブル席。真ん中のソファー席は若干視座が低く、どちらに視線を投げても窓の奥に仰ぎ気味に緑が見られる。どこか空中に建物が浮いているかのような浮遊感が得られる。





昼食にはピタを選んだ。4種類の中から2種を選べるのだがトマトとモッツァレラ、ベーコンとズッキーニを選んだ。ビシソワーズも美味しい。1300円程度。正直に言えばこの量ならば1300円は高い。同等の味でもっと手頃な値段設定の店はいくらでもあるように思う。しかし食材を山頂まで上げる手間を考えると、景観料のようなものだと思える。いや、この景色を楽しめるカフェで景色に阿らず値段が張ってもきちんと横着しない美味しい料理を出してくれていることに感謝したい。





自然はそれだけで素晴らしいインテリアになる。内装に手を入れるよりも外の緑を取り込むだけで無敵の装飾。晴れた日には大層気持ちが晴れる空間。山頂にある隠れ家感も好奇心をくすぐるからか、当然多くの人にほっておかれるわけもなく外で客が並ぶほどの人気がある。予約もできず、店まで来て満席だからといって簡単によその店へと移ることができないのがつらい。



春季は朝9時から11時まで特別に朝食も出している。観光客が動き出さない時間に来てのんびり文庫本でも開くのも幸せな時間。


http://www.mo-an.com/
075-761-2100
京都府京都市左京区吉田神楽岡町8 吉田山山頂
11:30〜18:00
ランチ営業、日曜営業