草食系

知人に草食系だと言われた。この草食系という言葉がどうにも好きになれない。


草食系男子の定義はいくつかあるが、「草食男子」を、『恋愛に「縁がない」わけではないのに「積極的」ではない、「肉」欲に淡々とした「草食男子」』などと定義される。


えてして消極的な男の態度を暗に批判するように使われるが、ここで指す肉食の「肉」は女性なのだろう。「私のような美味しそうな肉に食らいつかないなんて信じられない」「私を食べて」と言いたいのか。考えてみれば随分と品のない物言いだな。自分を腐女子などと自称する女性が草食系男子の消極性を非難するに至っては言いがかりに近い。腐ったものを避けるのは動物の生存本能なのに。


そもそも草食系という言葉が随分とずれている気がする。女性が求めているのはパートナー、彼氏、旦那ではないのかね。肉食獣なんてのは獲物を捕えて喰らいつき、食欲が満たされるまで食べたら基本的には食い散らかして去るだけだ。サバンナのライオン然り、熊も鮭が遡上する季節には鮭の卵だけ食べて身を捨てる。そういう食べ残しはハイエナやらネズミやらが始末する。そんな顛末でも構わないから食ってくれということかね。


それ以上におかしいのが草食系への理解だ。おそらくこの言葉を作った人は都会育ちで草食獣を知らない。春の田舎の牧場で朝の眠りを打ち破るのは鶏の鬨の声なんぞではなく、盛りのついたロバの甲高い鳴き声だ。一日中メスの尻を追いかけまわり、ときおり顔面を蹴られて鈍い音がしてもそれでも懲りずに追いかけ続ける。山羊の性欲も凄いものがある。それこそ西洋で繁殖力の象徴とされるぐらい凄い。草食獣は肉食獣に捕食されることを想定して繁殖するから肉食獣なんかよりもパートナー探しと繁殖に必死だ。真に女性が歓迎すべきは草食系男子だということになる。誤解を生む言葉を流布したマーケティング評論家は草食獣に謝れ。