新嘉坡という国

仕事の関係上シンガポールに駐在あるいは永住する可能性がないわけではない。そんな道がどれだけ魅力的かという視点をもって今回1週間ほどシンガポールに滞在した。


今や一人当たりGDPは2007年以来日本を超え、次々と建設される巨大コンベンションセンターや観光施設を目の当たりにすると国勢は日本と比べ物にならない。街ゆく人は人種豊かでインド人、中国人、マレー人、フィリピン人、アラブ人、豪州人から欧米人まで多彩。さほど見かけないのはアフリカ系の人種ぐらいか。金融や運輸などにおいて国家競争力は日本は既に遠く及ばない。


10年住んだところでその国が全て見通せるものではないことはわかっている。1週間なら尚更のこと。わずかな期間で垣間見えるたのはシンガポールが小さな箱の中に都合の良いものだけを取捨選択して寄せ集めた国家だということ。


新嘉坡経済を牽引するのは多数の出稼ぎ労働者だが、40代で2千万円近くの高額所得者であろうと、永住権が許可されないケースがある。それは定年まで新嘉坡で働いて貢献する経済的価値よりも定年後死ぬまで国に依存する福祉等の経済負担の方が上回ると看做されているかららしい。許可が下りない場合にそう理由を説明してくれるわけではないが、高所得水準にも関わらず一定の年齢以上だと許可されないケースからそう推測される。また、20代であろうとも、これまた同じ人種であろうと所得水準に応じて許可が降りる人とそうでない人がいる。自国に足りない労働力を都合良く輸入し、不況になれば国から追放する。非常に非情に合理的だ。ただ、移民政策はどこの国も似たようなものだ。自国に不足がちな職種に限ったり自国民の雇用を奪わないように各種制限を加えることは珍しいことではないのではあるが。


21歳以上の全国民が選挙権を持つが、なんと野党候補を当選させた選挙区民は、徴税面、公団住宅の改装が後回しにされるなどの懲罰をうける。言論は徹底的に取り締まる。落書きには鞭打ち刑だの、男性の同性愛行為は処罰の対象だの、麻薬所持や拳銃の発射は死刑だの、隅々まで管理され、不適切なものは罰則で取り締まられ不都合な存在は排除される。「嫌なら国から出ていけ」というのが露骨な国でもある。