タックスヘイブン 租税天国

予め言っておくと税法には明るくない。だからタックスヘイブンというやつがわからない。Tax Haven(租税回避地)であり、Tax Heaven(租税天国)ではないのだが、フランス語ではparadis fiscal(租税天国)となっており、内情はTax Heavenと呼んだほうが肌感覚に合うと思っている。


新嘉坡は他国に比較して魅力的な低法人税政策で外資系企業を優遇していることでも知られる。60年代の文化大革命や香港返還などの変革期を通じて、インフラの充実度、アジアの中心に位置する地理的優位性、国内政治の安定、そして何より低い法人税を魅力に多くの欧米企業がアジア本社をシンガポールに移した。低い税制で外資系企業本社機能を誘致するというのは小国の取れる魅力的な施策だ。ドバイもスイスもしかり。例えば日本で1000億円利益を上げていた外資系企業に法人税40%が課されて400億円の国税に納められていたとする。それを日本に販売子会社を新たに作り本社機能を法人税が15%のシンガポールに移した場合、日本には販売子会社の手数料収入数%に対する課税額しか収められないようになり、150億円がシンガポールに納税されるようになる。つまり大抵納税額は減る。


ここで考えたいのは税金は単なるコストではなく社会公共福祉の原資だということ。同じ掛け金で倍の年金をもらえるわけがないのと同様に、同程度の社会公共福祉を期待するならばそれ相応の税金という財源が必要なのだろう。しかしこの税優遇による誘致というのは小国にとっては低率だろうとも巨額の税金を大国から分捕るようなものだと言えないだろうか。もしシンガポールに本社を置きながら他国でビジネスを立ち上げ成長させていったのだったらそう文句は言わないが、実際には他国で一定規模に育った後で本社をシンガポールなどのタックスヘイブンに移転させて節税する場合が多い。それは本来収益を上げている市場の属する国が得るべきものではないのかね。収益力と納税負担能力と社会公共福祉の受益量に差が生じていると思っている。それもタックスヘイブンに都合の良いように。


現在の国際税制がそれを容認しているからと言えばそれまでだが、タックスヘイブンにある本社と現地法人の間を自由に人材が往来している現状をみると、納得できない不可解なことのひとつである。本社での収益は現地法人と行き来する人材の知識あってのものであるし、Arms Lengthを謡う完全な別会社ならばよその会社にせっせと業務知識を教えるなんてことは不自然極まりない。税法ってよくわからん。