泥水から立ち上がった茎の先に広がる華。これだけ重量感のある豪壮な華でありながら大雑把な印象は無い。むしろその気品のあること。


仏教思想を象徴する華として高い地位を得ているが桜ほどに日常生活を通じて馴染みがないのは住宅街付近の湖沼がことごとく干拓されてしまったからかもしれない。改めて思うが蓮は素晴らしい。2000年昔の種子を発芽させた大賀蓮中尊寺金色堂須弥壇から発見され800年を経て発芽した中尊寺蓮などその生命力にも何か特別なものを感じる。日本古来の種だけに勿体無い。もっと身近になってほしいものだ。


淡く柔らかな薄紅色。



花弁の縁や脈の紅は濃く、それ以外は白い。近くで見るとその繊細な模様が美しい。



太陽を花弁越しに見上げたり、薄暗いところから花弁を見ると、ぼんやりと紅い光を発しているかのようで幻想的。幾千と仏画のモチーフとして描かれており、今まで数多くの美しい蓮の絵を見てきたように思うが、本物を目の前にすると絵の限界は本物の遥か手前にある気がした。



蜂の巣のような穴の並ぶ花托も咲いている間は妖艶。特に白い雄蕊が海洋生物の触手のような艶かしさがある。



それも一旦花弁が落ちてしまうと何か愛嬌が出てくる。



鑑賞して良し、食べて良し、呑んで良し。こんな有難い華があるとはな。別格な存在に思う。蓮は7月の誕生花でもあるらしい