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黒揚羽蝶

カメラを近づけても堂々と動かなかった。真横から見ると、体躯と足は随分と前方についていてなんだかバランスが悪いように見える。かなり後肢でふんばっているのか。よほど羽が軽いのか。


果たして蝶は一般的に思われているような可憐で乙女な存在だろうか。頭部周辺だけを見れば蚊とそんなに構造は違わない。色が奇麗だからだというが、奇麗な色の蟲などいくらでもいる。一部の蠅は緑色の金属光沢がして美しい。たくさんの蝶が自分の周りを飛び回る状況を思い描いてみてほしい。一見、華やかかもしれない。しかしその蝶の頭の構造が蚊にそっくりなのも思い出して欲しい。手で振り払いたくなりやしないか。


蟲より蜥蜴など爬虫類や両生類のほうがよくよく見るとかわいいと思うのだがな。奇怪な複眼をした蟲よりも爬虫類や両生類の目のほうが奇麗だ。蟲の中ならハナムグリなんて丸っこくて愛嬌があるし、緑黄金色に輝く様は蝶を超える。「カワイさ」「キレイさ」を判断する際に一般的に細部の造形は見ないものなのか。遠目になんとなく奇麗なら細部がグロテスクでもお構いなしか。いや、思うに小さいころに蝶を見るたびに母親が「あらチョウチョねえ。キレイ」などと言うのを聞いたり絵本でキレイにデフォルメされた蝶を見て「蝶はキレイ」と盲目的に刷り込まれているのかもしれない。


発言が面白いからではなく、「これは笑って盛り上げるところだ」と機を窺って盛り上げる雛壇芸人のように。ここ笑うとこですよ、今、面白い発言しましたよとお仕着せがましい最近のテレビ。


蝶はキレイ、芋虫はキモチワルイなどと言う人は果たして本人がそう思っているのか疑わしい。伝え聞いたことを自分の実感のように口にしているだけではないか。蟲は種類を問わず嫌いな人のほうが筋が通っているように感じる。単に好き嫌いを口で言うだけならましだが、不快害虫と称して蟻や団子虫やナメクジを殺し、蛍は必死に増やそうとする。好き嫌いは主観だから、それこそ人それぞれなのだが、だからこそ好き嫌いの画一さが気持悪く、そこに感受性の欠如を感じるのだよ。