禅居庵 陶々喜〜榎本哲也個展

先週訪れたばかりなのに建仁寺の門前を通りがかり、目にした看板に誘い込まれた。


三十年前に陶芸を始め、趣味で続けて定年後は自分の窯を持つに至り作陶に没頭してきたという。喜寿を迎え、今までの集大成を個人展で皆に見てもらいたくなったのだそうだ。とうとう七十七。だから陶々七十七。「喜」の旧字に似せている。洒落てるじゃないか。


段々とご自身の陶芸論が弾みをつき、電機窯なんて焼物とは呼べんなどと始めたあたりは煙たかったが、登窯が好きなのが伝わってきた。


作品は基本的に茶碗であとは花入れなど。お茶をやるわけではなく作品として茶碗を造るのが好きなのだという。五条坂の陶器祭の新人作家さんより立派な器を造れるのだから、皿など日常器も造られたら良いのに、茶碗だけ七十以上もあってもそれをどうするのかとも思ったが、それは趣味なのだから余計なお世話だ。もしかしたら七十七年の人生が器ひとつひとつに込められているかもしれない。それぞれの年から1つ器を残していく。そんなのもいいな。帰り際にぐい飲みを来訪記念ということで無料で頂戴した。


こんな個人の個展に開放してくれるなんて粋な計らい。陶芸には真っ白な壁のギャラリーよりも寺と庭が似合う。