玉蟲

玉蟲って書くと王蟲みたいだけれども、ムシは蟲と書くのが正しく、虫はトカゲやヘビなんかを指していたらしい。今では慣用化されて蟲と書くほうが違和感があるけれども。


玉蟲色なんていうと立ち位置によってころころと見え方が変わる例えに使われる。しかし見る限り、同じ個所は同じ色だ。構造色であり光線の具合によって見える色が変わると言われるが、甲の部分はどう見ても緑色で、角度をどう変えようが青や赤にはならない。せいぜい腹部の橙色が黄色か赤に見える角度があるという程度。全体的に発色する色が七色に変わるわけではなく、各部に様々な色彩を持っているというだけの話だ。しかも甲よりも腹のほうが金属光沢の輝きは強い。玉蟲の色だって慣用句で使われる「玉虫色の政治決着」ほどはブレない。玉蟲も勝手な期待をされ、悪い表現に使われさぞ迷惑だろうよ。



そういえば、玉蟲はもっと扁平な蟲かと思っていたが、横から見ると随分と丸い。国宝「玉虫厨子」は養殖していたわけでもない玉蟲を採集してまわって作ったのだから非常に手間がかかったのだろう。



玉蟲はクヌギの葉なんかを食っているので杉の植栽が多くない東山山麓にはよく出没する。