蠍、蜥蜴、蝦蛄、蝉!


基本的には好き嫌いをしない、食べ物を残さず頂くを基本指針にしている。せっかく中国に来ているのだから中国らしい食物に挑戦してみようと思い、王府井の小吃街へ。



さっそく串焼屋が立ちはだかる。そうきたか。



でも蝉は流石にちょっと。最近、蝉に風物詩として親しんでいたし心理的にしんどい。何より左上の蝉に至っては背中が割れて羽化寸前。「八日目の蝉」の感傷的なエピソードを「長い地中暮らしを終えやっと七日間の地上生活を始める矢先に中国では蝉は捕まってしまうの。串刺しにされながら蝉は何を思うのかしら」といった感じに変更することを提案する。センチメンタルにグロテスクも加味されるに違いない。



蝉は動かない。当然隣の蚕蛹も動かない。そんな中、串刺しにされながらも死に物狂いで肢を動かしている蠍がいた。鮮度は抜群。



油で揚げる調理方法を炸(ジャー)という。鮮度も良いし、高温の油を通せばまず大丈夫だろう。



思いのほかサクサクとして香ばしくて美味しい。ただ、三匹で25元(300円)は高すぎる。三匹で5元程度ならばお八つ感覚に十匹ぐらい食べるのもありかも知れない。噛む前に舌先で針、あるいは鋏の鋭い先を感じる瞬間があってどきりとするが、この蠍は食用に養殖されているもので毒を殆ど持っていないらしい。




人手はパサパサして美味しくなかった。蝦蛄もこうして並ぶと蠍と遜色ない見た目だが、蝦蛄は絶対寿司ネタで食べたほうが美味いだろうと思って手を出さなかった。


もう少し外国人観光客ではなく中国人も食べているものを食べてみようと思い、牛のセンマイに胡麻ダレのかかったものを10元で買ってみた。最初の数口は美味しいのだが、量が多すぎる。食べていくうちに臭みを感じるようになる。大量の香草を添えてくれているのだが、香草と胡麻の合間から時折感じる臭みに少しばかり辟易とした。



百足も売られている。50元まですると買う気が起きない。よくも百足に奇麗に竹串を刺したものだな。



ここまで来ると魔女の鍋ですか、と問いたくなる。蜥蜴は見た目以前に骨と皮ばかりで食指が動かない。結局何一つ美味しいと思えるもの、常食したいものには出会えなかった。蛇も蜥蜴もどれも高蛋白質で滋養強壮に良いというが、裏を返せば中国人も美味しいから食べているわけでもなさそうだ。他に餃子や牛串、焼き玉蜀黍なども売っているが冷めていたり焼きが足りなかったりで美味しくない。小吃街は美味しいものを求めてというよりも観光と写真撮影か、話題作りに珍味を食べるだけに留めたほうが良い。


日本でも雲丹、蝦蛄、海鼠、河豚、あるいは鮟鱇なんてのも捌く前の姿を外国人に見せたらゲテモノとして喜ばれるのだろうか。日本の場合は科学的根拠が疑わしい滋養強壮目的ではなく、純粋に美味しいからそれらを食べているように見受けるがどうなのだろうか。