祖母とマンゴー

震災後に人生三度目の疎開をしに京都の我が家に滞在して以来、大の動物博愛者になった96歳の祖母。痴呆が始まり小生の嫁さんの名前は覚えもしなかったのに、マンゴーの名は無数の記憶が失われ行く中で新たに書き加えられたらしい。春以降、度々犬を飼いたい、マンゴーに会いたいというようになっていた。しかし京都への長旅はもう無理だと予感していた。


そこで今回、犬を祖母の家に連れていくことにした。孫の自分よりマンゴーのほうが歓迎されたのは確かだ。


「お父さんは戦争に取られていないし、4人の子供を育てるのに手一杯で昔は犬どころじゃなかったわ。」


しかし母曰く、平和な時代になっても犬猫を見ても病気が移るかもしれないから触るなと、むしろ犬猫を嫌っていたようだ。そんな祖母がマンゴーを知って以来、野良猫にまで可愛い猫ちゃんと言うほどの変わりよう。


これはマンゴーの殊勲と言える。犬猫の地位向上に多大な貢献を果たしたので、彼には今まで食べさせたことの無いバナナの小片が与えられた。