蟹考察

宿の仕入れ先の鮮魚店でもあると思うのだが、幾つかの店を紹介してもらった。見ている横から活きた蟹が次々と運び入れられる。特大な蟹が一杯四千円。勢子蟹に至っては一杯三百円。これが昨日頂いた極上の蟹ならばなんとも安い。


一体、どれだけ流通マージンを払っていることか。馬鹿らしくなる。無論、味の劣化を最小限に留めるために冷蔵で迅速に運送するには多大な設備投資も必要だろう。しかし都市部で味わえる蟹の程度を考えると価格差は割りに合わない。


ちなみにこの店には津居山蟹や間人蟹などが卸されてくるが味に差はない。間人港には四隻の蟹取り漁船しか許されておらず、その稀少性から高いブランド価値を築いているが漁場は同じだそうだ。 同じ漁場や漁港からの蟹でも、これが城崎や天橋立にいくと値段ははね上がる。都市部から来た温泉観光客が大勢いて高く売れるからだろう。



世の中、本場や産地にいっても美味しくない、安くないということが思いの外、多い。しかし蟹に関しては現地に行く価値が顕著だとわかった。



いや、丹後から京都市街なら三、四時間もあれば着く。信頼できる鮮魚店を見つけてクール便で送れば水揚げしたその日の晩には着くかもしれない。


勢子蟹は雄蟹に比べて破格の安さだ。抱卵していないと更に安くなる。しかしこれがうまい上に最も費用対効果が高い。そもそも卵など旨くないし身が痩せる。勢子蟹の味噌汁の旨さといったら。。。



何千円もする雄蟹をこちらの手落ちで調理に失敗するのは怖い。しかし勢子蟹は丸ごと鍋に放り込むだけで美味なのは実証済みだから安心だ。


この冬、一度ぐらい勢子蟹を四五杯送ってもらおうか。