御重


結婚して帰国して初めて、正月に御重を食べている。昨年も食べるには食べたのだが御重がなかったのでなんとなく雰囲気は出なかった。百貨店で漆には手が出ないのでもう少し雑に扱える素材の器を買い、準備した。嫁さんが作って、小生が詰める。


詰める品数は重ごとに奇数でないといけないだとか、いろいろ知らないことが多い。奇数 は 偶数で割れない数字 (割れない、分かれない、に通じる ) であることからめでたい「 陽数」だと陰陽思想では考える。そこで御重でもめでたさを表す為に奇数にするのだそうだ。ゲン担ぎに似たものか。御祝儀に3万円や5万円を渡すのと同様で、その理屈でいくと9種詰めるのが最もめでたいことになる。


3月3日の桃の節句、5月5日の菖蒲の節句、7月7日の七夕に9月9日の菊の節句。これらも陽数が重なっているのでめでたいことを祝うのかと思いきや、奇数の重なる月日は陽の気が強すぎるため不吉とされ、それを払う行事として節句が行なわれていたのだそうだ。なんだかようわからん迷信の世界に思える。では11月11日はというと節句ではない。ポッキーの日であったり、もやしの日であったり、魚扁に十一十一と書くので鮭の日だったり。こちらは字面しかみていない。もしや箸の日では、とも思ったのだがそちらは8月4日なのだそうだ。


夫婦二人と犬一匹だけなので伝統やシガラミに無頓着に好きなようにやることが多かったが、自ら御重を用意して注連縄も張って、世間でするのを見よう見真似して正月を迎えるとなんだか、いっぱしに世帯を持ったのだと実感が涌いてくるものである。



詰め方にも細かい規則や定石があるように思うが、今年はこれで良い。伊達巻、蒲鉾、田作り、黒豆、数の子、昆布巻き、なぜかいくらに牛タン。栗金団はなかったな。