ひつまぶし 木屋


鰻と言えば、江戸前鰻を連想する。しかし結論としては蒸さずに炭火で焼いただけの外が香ばしくパリッとしていて、身が柔らかい関西式の焼き方が好きだ。



とりわけ葱、山葵、海苔とともに出汁を注いで食べるひつまぶしの食べ方が。



入口脇の調理台の上で親父さんが忙しなく鰻に串を通していた。そちらに目を奪われて気付かなかったのだが、さらに奥では老女将が炭火で鰻を焼いていた。腰は少し曲がり、70歳は優に越え、80代に届くかもしれない。冬といえど狭い調理場で燃え続ける炭の熱気で頬には汗が流れ、火照っている。表情には自分の居場所を誇示するかのように気力が漲っていて見とれてしまった。最も高齢にして繁盛店の最大戦力の婆様。タレに漬けては焼き、漬けては焼き、もう出来ただろうとこちらが思っても更に焼きを繰り返す。ううむ、かっこいい。


市役所裏の名古屋城観光の後にもってこいの鰻屋「木屋」。おひつまぶしは2800円。美味いからその価値はあるのだろうが、贅沢をしてしまったなあ、とも思う。しかし更に婆様の勇姿を拝むとただ満足。