ピッツァリア ナポリターナ ダ ユキ


断言する。今まで食べたピザで一番美味い。


ここには四種のチーズのピザというものがあるのだが、ゴルゴンゾーラ、モッツァレラなどチーズの他にオリーブ油を少し垂らしただけの至ってシンプルなピザではあるが青カビチーズの濃厚な風味がチーズ好きにはたまらない。バジリコやプロシュートを載せたピザは他の店でも見掛けるが、ここまでチーズの美味いピザは初めてだ。


内側は薄手で縁が厚みのあるピザ生地も美味い。パリパリサクサクとしたイタリアンピザではなく、どちらかといえばもちもちとした食感で噛んでいて味わいのある、丁寧に発酵させた生地。


食事の進捗を厨房から窺いながら次の皿を出すような上等な料理屋のようなことをしてくれるので、作業の流れを観察した。


まずイタリア人の給仕が注文を取ったり水を注いだりする傍ら各テーブルに目を配って状況を把握する。それを厨房の中に伝えるとおそらくはオーナーシェフである男が手際よく生地を広げ、具を載せて石焼き窯に入れる。その後、三十秒もしたらもう窯に向かい、一旦ピザを取り出した。そこからは窯の入り口付近でピザを器用に回転させながらもう三十秒ほど調整するように焼く。焼き上がりまでたったの一分。


なんでも石窯で450℃の高温なので、基本的に焼くのは一分ほどだという。この調理時間の短さが適時の給仕を可能にしているのだろう。熱々でありながらトマトペーストの新鮮さと汁けが失われない鍵だと思われる。ちなみに石窯の燃料は薪。


石窯はたった一分の調理時間の為に開店前から常に焚き続けているのだろう。店は20席程度しかないが、本来は50席ほどの店を賄うキャパシティがあるのだろう。


美味しい食事で人を幸せにしたいという料理人がいるが、この店の期待を上回るチーズピザは確かになんともいえぬ幸せな気分にしてくれた。この日は仕事の雑務にげんなりしていたが、そんな気分はピザを食べるだけで霧散した。会計の時に、とても美味しかったと伝えるとはちきれんばかりの爽やかな満面の笑みを返してくれた。ピザ作りが心底好きなのだろうな。いつも満席の繁盛店になってもいつまでも変わらないでいてほしい。


東山駅から徒歩10分、小さいがいつも満席のナポリターナピッツァリア。働いているのは全て若い男性、募集しているアルバイトも男性の店でもある。