花のあと

藤沢周平原作の短編小説の一話を映画化した作品。


映画化するからには想像を上回るような美しい映像やリアリティで魅せてほしいものだけれども、原作には遙かに及ばない実写化が殆ど。そんな中で「花のあと」も例に漏れず。


北川景子という人気若手女優が伊登役を演じているのだが、ここまでの大根役者っぷりを見せてくれた女優も久しぶり。口を薄く半開きにした表情が多いのだが、一部のファンにはそれが魅力的に映るのか知らんが、どうも呆けて見える。小説では凛とした気の強い女性だったと思うのだが、江戸時代の武家の娘ならなおさら口をだらしなく開けた表情というのは作品にそぐわない。台詞も表情の伴わない棒読み。実写化にあたって演技力を問わずに人気重視のキャスティングがされたのだろうか。


悪口ばかりを書き連ねることになるので、観たことすら書き留めておくことが躊躇われたが、そんな中、光る役者さんがいた。片桐才助役を演じる甲本雅裕。風采の上がらない許婚という設定なのだが、どこか温かみのある実に存在感のある演技をしている。てきぱきと物事をこなし、いかにも弁が立つという類の人物ではない。陽気で悪く見れば粗野で吞気そうに振舞っている。事態の深刻さがわかってるのか、大丈夫かなこの人、そう侮って接してしまいそうなぐらいでありながら、ひょうひょうといとも簡単に困難なことをこなしていく。緊張する人というよりは安らげる人。こんな人、良いなあ、と思った。

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