深夜特急


この年になって深夜特急で旅をすることになるとは。折角、北印度に来たので延泊してアグラのタージマハルを見物しに行ったのだが、帰りの列車が待てども来ない。


地球の歩き方には「昔と違い、滅多に列車は遅れない」と書いてあったが17:55発の列車がアグラ駅に到着したのは結局23:40。元々の出発時刻の時点で4時間遅延が判明していたので食事をしに一旦、駅の外に出た。しかし戻ってきてからもさらに発着時間が延びること5回。



その間、いろいろな人と話したのだが、正直にいって公用語であるはずの英語が通じる人が少ない。やはり英語は印度にとっても外国語ということか。ならばヒンドゥー語なら通じるかというとそうでもなく、やれウルドゥー語だ、ラジャスターニ語だと公式に紙幣に印刷されているだけでも14言語があるくらいなので同国人間でも意思の疎通が自由とはいかない。


なかには23時の列車の為に21時から駅で待っている男もいて随分と辛抱強いと感心したが、駅に来るまでの予想外の問題も想定して早く来たのだろうか。



来たのは寝台車だった。ううむ。食い散らかされていて汚い。幸いにして上段だったので、寝転がってしまえば下からは見えないので安心。


厄介なのは6時間も遅れてきたぐらいなので、所定2時間のところを結局何時間かかってニューデリーにつくか皆目見当がつかないことだった。しかも深夜特急に乗る予定ではなかったので目覚まし時計や荷物を固定する鋼鉄ワイヤーなんかのバックパック旅の準備をしていない。真っ暗闇の中、いつデリーに着くかわからずに難儀した。実際にニューデリーに着いた際も車内放送など流れず、わざわざ車両から出て確認しなければわからなかったので、眠りに落ちていたら確実に乗り過ごしていたことだと思う。寝過していたらパンジャブまで行ってしまうらしい。そうなれば飛行機を乗り過ごすことも確実だ。


そんなこんなでホテルに着いたのは朝の4時過ぎだった。汗とともに疲れがべっとりと全身にこびり付いているような気分だった。