コミュニケーション

3日間の会話や議論に関する研修からの備忘録。


相手の話を真摯に聞こうとしていると研修に同席していた初対面の多くの人に褒められた。しかし関係の長い同僚からは相手の話を聞かないだとか頑固だという指摘を受けることもたまにある。


この背反する指摘は何か。思うに、相手の言うことをよく理解しようと相手の意見を引き出したり、相手の真意を確認する話し方をする。しかし実は意見の不一致の理由を探していたり論破するとっかかりをさぐっていたりしているわけで、言うなれば自分の意見を受け入れさせる方法を模索していることが多々ある。つまり言葉そのものは相手の意見を聞き出そうとしているものだが、会話全体としては自分の主張を譲る気が無く相手を従わせようとしていると感じた人は「相手の話を聞かない」と感じる。そういうことだと自己分析。


Assertiveと呼ばれる議論様式がある。とても欧米的な様式だと思うのだが、何が良くて、何が気に食わなくて、どうしたくて、それをすればどんな便益があり、されなければどんな不都合があるかを伝えるというものなのだがこれがなかなか馴染みにくい。Assertiveとは理由づけをせずに明瞭に意思を伝える形式。しかし小生らは仕事上の会議で意思決定を短時間に効率的に行うべく育てられてきたわけで、その為に提案と理由づけをもう無意識といってもいいぐらいやってしまう。それが時に妨げとなる。


コミュニケーションの様式も相手や相手の状況次第で適切なものを選ばなければいけない。今までの自分の過ちは、説得が足らないと判断してさらに理由を並べて説得を試みる、あるいは実現できたらいかに素敵か魅力を伝えるだけだった。相手が納得しない場合はさらに説得を重ねて望む結果を得ようとする人は組織内にも多い。しかし説得が効果的なのは自分が事実を十分に把握しており、かつ相手が冷静に合理的決断を下そうとしているときには有効だが、特に感情的になっている場合には逆効果。感情的になっている相手にはもし結果にまだ変更の余地があるならBridgingして自分が知らないかもしれない相手の懸念事項や不安を聞き出すなどすることが効果的であるし、もし決定事項で譲歩の余地がない場合には理由をくどくどと述べずに完結にAsserting、つまり断定的に伝えるのが良い。それでも膠着するようならばDisengage、つまり一旦休憩をとるなり、日を改めるなり出直すのが良い。


効果的に議論を中断させたり退いたりするDisengaging、そして理想状態を頭の中に描かせて鼓舞するEnvisioning、共通の理解を促すために自分自身のことや感情を相手に伝えるDisclosingといった会話の技術に乏しいことを自覚した。そして言葉よりも声の調子、声の調子よりもボディラングエージのほうが重要だという。小生は声の抑揚が無くなりがちなので気をつけないといけない。


欧米社会でうまくコミュニケーションをする為にはこれら会話や議論の多彩な手法を駆使することが効果的だということはよくわかった。しかし日本語に置き換えた場合、伝統的な価値観を持つ日本人を相手にした場合にはそのまま使うには難がある。いかにも洋行帰りの、あるいはアクの強い人に思われてしまいそうだ。日本語の会話においてはある程度、言葉を柔らかくする必要がある。


コミュニケーションのスキルが上達していれば、今までの公私における失敗の半分ぐらいは防げたような気がする。