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冬虫夏草 団子蟲風鉢

もう季節は秋。食欲の秋といまさら言わなくても通年で食べ過ぎなので、食欲よりも芸術の秋を志向しようかと思う。


しかし芸術的とは何だろう。創造的であることか。創造的とは何だろう。世に出た誰かの作品の模作ではなく、周囲の評価から完全に自由な作品造りかもしれない。そうやって始点と最初に向くべき方向を微妙に間違えると、進むにつれて間違いは大きくなる。


どこにでもいるダンゴムシ。普段目にするものは大半がオカダンゴムシという奴で、Wikipediaによると「甲殻類の仲間で、毒などを持っていないダンゴムシは、災害時の非常食として利用できる。加熱するとポップコーンのように弾ける。弾けきると食べごろである[3]。」とのこと。信じがたい。どうやらディスカバリーテレビの『MAN vs WILD』という番組で食用にされたというだけで世界のどこかに食用習慣のある人達がいるわけではないらしい。Wikipediaを安易に信じると痛い目に遭う。


脱線した。「小さくてコロコロと丸まってかわいい」などと抜かす輩も多いが、近くで見ればグロテスク極まりない。そのグロテスクさを認識したうえで「かわいい」と言って欲しいものだ。


そんなわけで、ダンゴムシへの自分なりの敬意を表して「ダンゴムシを専門に宿主にする冬虫夏草菌に侵されたダンゴムシ型の植木鉢」という非常にニッチな分野の植木鉢を造ることにした。しかも敢えてグロテスクな細部までを再現する。どうやらこの陶芸教室でダンゴムシを作った人は初めてだと思われる。横の作業台では20代の華やかな若い女性達がカフェオレボウルだの御飯茶碗だのを作るべく談笑していたので、こちらを見られないかとひやひやした。「何あのオッサン、一人でなんかキモイものを造ってる。あれと一緒に私達の作品を焼いて欲しくないよねー」「土がカワイソー」とでも言われそうだ。


作陶すること1時間。多少のディフォルメはさせてもらった。死んで薄く開いた隙間から植物が生える仕様。後尾部の甲殻は本来はY字になっているが無視させてもらった。世間一般の人は団子蟲の細部など知る由も無く、忠実に作り過ぎると頭の中で描く団子蟲から乖離しかねない。


上部に付けた菌子実体はやはり白鳳か白マットで釉掛けして菌子感を出したい。しかし脚が割れて取れないように全体を収縮率の少ない白荒土で造ってしまった。白土の上に白系の釉薬ではメリハリがつかない。やはり躯体を黒化粧土で塗り、菌子実体とその周辺を柄杓掛けするように白系釉薬を掛けるのが良いように思う。粘菌が侵食している雰囲気を出すために粘性の高い釉薬を使いたいところだが、白萩釉などは用意されていないのでやはり白鳳か白マットで我慢するしかない。

とりあえず黒化粧土をかけたところで作業終了。素焼きへとまわす。