平安餅と山口華楊展


華楊展を観る前に平安餅を摘む。気軽で美味い。


荷風」という作品があった。鷺は追い風で降りているが、こんなに強風だと向かい風で降りる方が鳥は安定しないものか。強風に逆らうように降り立っている方が「荷風」の題にもそぐうのでは。


習作やデッサン、下書きの類がたくさん展示されていたのも面白い。「猛る」と題された迫力ある雄牛の絵があるのだが、左後肢を前にした構図、後にした構図がそれぞれ描かれており、どちらの構図がより力を溜めて今にも突きかかろうとしている雄牛になるか試行錯誤した跡がわかる。


晩年の作品の跳ねる狐二匹を描いた「幻化」、巨樹に浮かび上がるように描かれた梟の「木精」には魅入ってしまった。


ところで「栗に栗鼠」という作品があったのだが、もともとは「栗と栗鼠」で後世に勝手に改題されたということはないのだろうか。しょうもないことだが。


山口華楊は竹内栖鳳門下だったらしいが、栖鳳に比べて随分と輪郭のぼんやりとした絵を描く。横山大観は朦朧体と呼ばれるのがぴったりとくるようななんだか気持の悪いぼやけ具合で苦手なのだが山口華楊の描く動物画は写実性があるので輪郭のぼやけが気にならない。


近代美術館の常設展に展示されていた竹内栖鳳の「秋興」を観る。このトルコ青の色使いと筆遣いは竹内栖鳳を特別な画家たらしめる何かなのだと素人心に思った。