海の幸の宴 続く


丸ハゲ ミーツ 丸ハゲ


カワハギというだけあって、皮を剥ぐ。剥いだ皮はまるでマスクのようで、口と目と胸ヒレの痕がそのまま残る。目の周辺を剥ぐときに目玉が一緒に引き千切られそうに飛び出るあの気持ち悪さは剥いだ者にしかわからない感触だと思う。無事に身ぐるみ剥がされたカワハギはほんのり紅が差してみているこちらも恥ずかしくなる。きゃつらは四尾とも今回は煮つけではなく鍋に入った。結論としてはカワハギは煮つけのほうが美味い。鍋に入れると身が崩れて小骨がそこらに散らばるのも煩わしい。



ブラックタイガーは東南アジアからの輸入とばかり思っていたが、国産と書かれていたらしい。養殖ということか。


日本語で黒虎海老とでも呼んだほうが有難味が出るのではないだろうか。黒龍海老と呼んでも良いぐらい黒光りしていて美しい形をしている。ガーリックを炒めたオリーブオイルで焼き、さらに赤ワインでフランベした。この調理方法、パサパサとせずに冷めても美味くて良い。ちなみにもう酸化しつつあるマルベックのアルゼンチン赤ワインを使っているのだが、フランべするワインによって味は変わるものなのだろうか。



市場の人が、石鰈よりも美味いと思うと言っていた赤鰈は煮つけることにした。

カワハギも的鯛も随分と不細工な魚だと思ったが、鰈には叶わない。そもそも視力が良さそうでもないので、顔全体が崩れるほどの無理をして目玉を反対側まで移動させる必要はあるのだろうか。間近で見れば見るほど冗談のような顔をしている。



煮つけの味は前評判通り。これまた熱くても美味いし冷めて味が染み込んだものも絶品。煮汁にも全く臭みが出ないのは鮮度ゆえか。



今回の一番の驚きと発見は的鯛の美味さ。フランスではサンピエールと呼ばれ、舌平目と的鯛はムニエルにする二大最高級素材なのだそうだ。小さな型とは言え、四尾でたったの120円だったので半信半疑だったが。一尾は頑張って皮まで剥ぎ、残り三尾は面倒臭くなって皮ごとムニエルにしたのだが皮がついていたほうが俄然美味しい。手間を掛けて無駄な事をした。ムニエルにしてそのまま食べる一方、バターと赤ワインを煮立たせ、そこに荒挽き胡椒とレモン汁を加えたソースも用意した。そのままでも十分に美味いのだが、ソースをかけるとなんだか上等な料理屋の洋食のような味になった。


今回食べた中では下拵えの手軽さと期待を上回る味の良さでは的鯛がダントツか。赤鰈、ブラックタイガーも手軽な割に美味。螺貝は期待通りの磯の香りが楽しめた。手間はかかるものの赤烏賊の刺身も絶品。他の調理方法のほうが美味そうだと感じたのがカワハギだった。カワハギが手間暇も一番かかる。芝蝦は高級素材と期待したほどでもなかった。鮮度が落ちるのが早いようで、臭みが出始めていたのが残念。


いやはや、珍しい海の幸探訪、楽しかった。