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ビンベトカの洞窟狩猟図

史跡 意匠 旅 遠出

ボパールから南へ一時間走らせた田舎に遥か一万年の昔に人類の祖が暮らし、岩壁に狩猟絵図を遺した史蹟がある。



高さ17mの一番大きな岩洞の左手脇には角牛が描かれていた。


確かに迫り出した岩壁の下はロックシェルターと呼ぶに相応しく、雨風を凌ぐのに都合が良い。しかし周辺は見渡す限りの灌木林で、どこを狩猟したら何が獲れるというのだろう。猿の他に栗鼠も見かけた。巨大な蜂の巣もあった。しかし水源は数キロ先まで見かけない。岩が浸食された頃は海岸沿いだったらしいが一万年前には既にインド亜大陸デカン高原付近に岩場も移動していたはずだ。自分なら3日ほどで死ぬかもしれない。



狩猟絵図には牛や馬、猪が描かれる。昔はもっと森が豊かだったということか。



植物染料を用いているらしく、白色は1万年前、褐色は5000年前、黄色と緑は4500年前とのこと。時代によって画材も変わる。あまりに素朴な落書き調のものから、芸術風タッチのものまで。馬に跨がり剣や槍を振りかざして対峙している絵は、そんな部族間で争い合う時代までこの岩穴に人が住んでいたということなのか、それとも後世の人が加筆する為にここまで来たのか。当時も絵心の有無はあったに違いない。お前は下手だから描くなとか、貴重な染料と少ない岩肌を無駄にするなとか言われたのだろうか。選ばれた者が特別な時に一族を代表して描いたのだろうか。



いつまでが猿でいつから人になったのだろう。いつから人は自我や嫉妬やユーモアを持ち始めたのだろうか。いつから生死に関係のないしょうもないことにばかり悩んで忙殺されるようになったのだろうか。いつから若い頃の甘酸っぱい失敗を突如思い出して急に恥ずかしくなりひとり居たたまれなくなるようになったのだろうか。いつから仕事の為の無駄な仕事を作りだす余裕が群れの中に生まれたのだろうか。まあ、この時代に戻りたくは無いですが。