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熱海の岬 バブルの残り香

旅 遠出 料理屋 カフェ

熱海城からバス代やケーブルカー代を浮かす為に歩いて下って行ったら腹が鳴った。断崖絶壁の上に迫り出すように建つ見晴らしのよさそうなカフェレストランが見えたので立ち寄ってみた。花の妖精という名前らしい。

無駄に豪華に甲殻付きの海鮮カレー。帆立やら伊勢海老やら。



カレーのような香も味も強いものを掛けてしまったら伊勢海老の風味は蔽いつくされてしまう。これはやはり見た目の豪華さを重視した一皿なんだろうな。



店内は西洋の宮殿の内装を意識したような紋章柄のビロードソファが熱海の絶景を眺められるように窓際に配置されていた。意中の女性を助手席に乗せてドライブした末にランチに立ち寄るようなバブル真っ最中のデートを彷彿とさせる店だった。



窓から右手に初島、左手には切り立った海岸線が見える。何やら対岸に白く輝くギリシャ神殿風の列柱が見える。店員にそこまで歩けるか聞いてみると、自由に入って行けるけれどもあそこには何も無いですよ、と興味も無さげに言われた。それがまたなぜか好奇心を刺激して、そこまで歩いてみる事にした。


これまたいかにもバブル期に建てたような西洋への憧れを感じさせる石柵を伝って歩き、煉瓦敷きの階段を降りていく。


石ではなくコンクリートで模しているだけだから老朽化した個所では中の鉄筋が露出していたりしていて古びた石柱の味わいとは違う方向に経年変化している。これまた雰囲気だけを真似ようとして内実が伴っていない点が如何にもなバブル期らしさを感じるわけだ。



カフェレストランから白く輝いて見えていたものに辿り着いた。近くで見るべきものではなかった。



もはや最後に誰かが覗いたのはいつだかわからない望遠双眼鏡。水平線はどこを見ても水平線で、初島はこの望遠鏡の性能では何も見えないほどの遠さがある。これはオブジェだ。



観光客が誰ひとりとして訪ねる事の無い半ば廃墟化したような場所だった。取り残されたような風情と静けさが良い。鞄の中に文庫本が入っていればよかったのにな。お茶でも飲みながら1,2時間本でも読みたい空間だった。


さらに降りていくと露天風呂の遺構のようなものがあった。波打ち際にそんな風呂があったら豪勢だろうな、という誰かの想像をそのまま形にしたもののやはり運用に経済的に無理があって放置された様子だった。乱暴な金の使い方が横行した時代だったのだろうな、バブル期というやつは。一面の遊歩道はニューアカオホテルが整備したものでまだ現役で営業しているホテルだが、遊歩道は人気がなく取り残された状態だった。


遺跡に通じるような遺棄された静けさと頽廃感が漂っていて楽しかった。人には勧められないが足を運ぶ甲斐はあった。