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沖縄料理の隠れた絶品 白烏賊墨汁


なんだか心が和む夕食だった。


朝もビュッフェ、昼もビュッフェ、さらにはスイーツバイキングと暴飲暴食を続けていたので腹は全く減っていない。それでも貧乏性なもので、夕食を抜くなどという節制はできなかった。


ホテルから車を出し、駐屯米国陸軍トリイ基地の近くの大木海産物レストランという料理屋に行った。Webで見つけた、御自身の休息に頻繁に立ち寄るというツアーガイドの評判とお勧めのままに、白イカ墨汁とバター焼きだけを注文。


沖縄料理というと美味しくないという人もいる。沖縄そばはコシがないだとか、ラフテーなんかも脂こくて繊細さが無い、と。私は沖縄料理は好きだが、嫌いな人の意見もわからんでもない。確かに淡い味付けで目を瞑って味わうような料理は沖縄料理に少なく、どれも基本的には味がはっきりしていると思う。


そんな沖縄料理への偏見を持っていたが、今回初めて白イカの墨汁を食べてみて私も嫁さんもすっかり虜になってしまった。塩気は強くないし、脂っこさも皆無。味噌汁の代わりに飲むべきようなもので、烏賊の切身が汁の具として入ってはいるが主体は汁だ。この汁が味付けは濃くないのにコクが深い。あっさりとしているのに濃厚なコクの塊というか、形容しがたい。イカ汁全般がこんなに美味しいものなのか、この店のイカ汁がとりわけ美味しいのかは知らないが出会いと発見の喜びをくれる好みの味だった。


ミーバイのバター焼きも大蒜が効いて満腹中枢を麻痺させる味だった。沖縄の魚は大味で脂が載っておらず美味しくないという評判も聞くが、単に適した調理法で食べてないだけのことなのだろう。冷たい海の魚と同じ食べ方をして決めつけるのも浅はかだ。


隣に座った初老の親爺が取り置きの渋い甕に入った古酒を飲みながら息子に話しかけてきてくれた。そのうち、席をたったかと思うと蛇革の張られた三線を持ってきて弾き、息子に向かって唄い始める。親爺と同席していた若い女性も合いの手を入れて唄い始める。この店に通って40年近くになるという親爺さん御一行に心温まるもてなしをして頂いた。


ガイドブックには沖縄そば、紅芋タルト、サーターアンダギー、海ぶどう丼や海鮮丼ばかりが載っている。それらよりも地元民に愛される店の地元料理こそが美味いのかもしれん。烏賊汁はもっと名物として取り上げられても良い。少なくとも著名な沖縄料理よりも好みに合う。



新しい土地での全く新しい味覚との出会い。これは旅の醍醐味だな。