CAFE 2 MOULIN アメリのドヤ顔

初日にぶらりと入ったビストロが思いの外、美味しくなかった。ローカルっぽいフランス人が多く、満席に近くて、トリップアドバイザーの高得点の表彰状のようなものを掲げているにもかかわらずだ。雰囲気は良い。しかしフランスならどこでもそれなりに美味しいと決めつけたのは間違いか。


そこで二日目は若いシェフの創作が評判の人気のビストロに足を運んだのだが、一人だと告げると空席は多いのに満席だと断られた。流石にきっちりとしたパンツジャケットのままだしアジア人差別だとは思わないが、せめて二人客でないと金にならんと思われたのだろうか。


そんなわけで仕方なくCAFE 2 MOULINに入った。映画アメリの舞台となって有名になったクレムブリュレが評判の店で食事もある。ここなら独り身観光客にも優しいと思われる。ちなみにアメリ愛好家の夢を砕くような話だが、アメリの舞台はパリでも如何わしい街で道端にはSEX SHOPなんかの派手なピンクなネオンが輝く、とてもメルヘンな雰囲気の街ではない。



取り敢えずGRIMBERGENというお気に入りのベルギービールが置いてあるのでそれを飲む。アペタイザーから順繰り攻めたいが、恐らく量が多すぎるのでいきなりメインディシュの牛フィレのブルーチーズソースを頼む。


店の奥にはオドレイ・トトの威圧するようなドヤ顏が飾られており、そちらを振り向くと目が合う。可愛い印象があったがいざ面と向かってみるとよくわからなくなってくる。目が合うと食事が止まる。時折、白人観光客が写真を撮りに店の奥までくる。アメリはフランス映画。アメリカ人の間ではどうなのかわからないが、カナダあたりでは人気だったそうだ。日本でもアメリ人気は凄かったが、日本人観光客にほとんど出会わない。

牛フィレのブルーチーズソース掛けは美味かった。昨日のフランス人だらけのビストロより美味く感じるのは味覚がやはり外国人だからなのか。付け合わせのマッシュルームもサヤインゲンも馬鈴薯も味付けは少し濃いがビールに合う味だ。昨日の失望を少しは取り戻した気になる。

気付いたら瞬間的にアジア人観光客に囲まれた。中国人とカンボジア人だと思われる。どうせならパリにいる間はフランス人に囲まれたいと思うのは勝手な思いか。日本の観光地で欧米人が欧米人に囲まれたら興を削がれるのだろうか?