エッフェルとゲイ

出張で一緒に行動している印度人がエッフェル塔に登りたいと連日のようにアピールしてくるので、さほど気が乗らなかったが向かってみることにした。

ことはそう簡単には行かなかった。展望台に上るエレベーターのチケットは数ヶ月前に売り切れるらしい。登る唯一の方法は700段の階段を上る当日券を買うこと。しかしそれすらも長蛇の列。一時間は並びそうな予感がしたが列の最後尾に加わった。


目の前に中国人と思しき男二人がいた。この二人がエッフェル塔の下で気分が盛り上がってしまったのかキスを始めた。しかもクチャクチャ音を立ててねちっこく。。。


フランスは自由の国だ。同性愛パートナーにも税制優遇を与える国だ。自分も彼らに偏見も差別も無い心の広い人間でありたいとリベラルを気取りたかったが言わせてもらう。目障りだ。気色が悪い。不愉快だ。品がない。公共マナーがない。自由を履き違えるな。公園の暗がりの片隅か、ホテルか家にでも戻ってやれ。


突き詰めると、同性だから不愉快だった訳ではない。大勢が並んでる列の中で、他の人が不愉快に感じても距離も取れず逃げられない状況をわきまえないのが不快なのだ。ここはフランスなのだから文句ないだろう、というこれ見よがしな尊大さが不快なのだ。カップルが異性だったとしても同様に不快に思う状況だ。軽くキスしてハグするぐらいが公共の人混みの中における許容値ではないだろうか。


ああ、人混みは嫌いだ。インド人の同僚と目が合うと、なんとなくお互いに頷いた。登らずに帰った。