青梅という街並み


駅舎から既に昭和初期の街並みは始まっている。



街道沿いには映画の立て看板を冠した商店が並び、団塊の世代が子供の頃に親しんだものに溢れていて面白い。ただ、紅葉の時期の11月の土曜日だというのに道行く人は少ない。少なさすぎる。これで町興しが成功しているとは言い難い。



商店に飾られた映画看板は目を楽しませてくれる。手描きであのクオリティは素晴らしい。撮影好きならば写真を撮りたくなる。

停留所も昭和情緒に溢れていて良い。



赤塚不二夫記念館、幻燈館、レトロ館の三館共通券で1500円というのも高すぎず安すぎずの適切な値段設定に思える。


足り無いのは何だろうか。



一歩下がって想定客層から考えてみる。
まずは子供の頃にその時代を生きて微かに記憶に残っている団塊世代は外せない。貪欲で活動的で経済力と時間的余裕もある人達だ。消費を楽しんできた世代でもあり、横の繋がりを楽しむ社交性の高い世代でもある。


二つ目は20代、30代の好奇心旺盛な子無し世代。デートのネタ、非日常な空間に飢えている行動的な人達。あるいは懐古趣味を持つ若者。テレビや本で昭和初期を見聞きはしているが、直接当時のものを見ておらず、半ばファンタジーのように生まれる前の一時代を眺める人達。


他に考えられるのはアジア各国の観光客。購買力も増して随分とタイやマレーシア、フィリピンなどからも観光客が増えたという。京都鎌倉のような古都寺社仏閣の日本と渋谷新宿六本木のような現代日本だけでなく、その過渡期の日本というのも面白いコンテンツにならないものか。大家族から核家族に移行していく時代、購買力が上がるもそれを遥かに超える買いたい物があった時代、ドラえもんの舞台のような背景のある時代。彼らにとっても懐かしい心景が日本にもあった。そんな素朴な親近感を深める遠足も良いのでないか。東京から日帰りの距離というのも良い。

暇だが好奇心と行動力が旺盛な団塊世代には各想定客層を考えても絶対的に魅力的な飲食店が足りない。食べログで事前に調べてもろくに検索結果が出てこなかった。隣町の河辺で食べてゆくことを検討したぐらいだ。モノを買わなくても誰もがすること。それは飲食なのに、そこが弱い。街並みを見るだけでは物足りないのではなかろうか。集まる場と集まるきっかけがもっとあれば良いのかもしれない。婆様が、定期的に巣鴨に遊びに行っていたように、「あなた、また青梅に行くの?好きねえ」「いや、同窓会がまた青梅なんだよ。でも青梅も面白いぞ。例えば。。。」なんて会話が引き出せるような街になれれば良い。



例えば新宿にあるような三丁目酒場とか、電気ブランなんかの酒を置いている飲み屋は無いものか。ソワレのフルーツポンチやメロンソーダなんかを置いた純喫茶。麦飯、メザシ、安全に作った派手な着色ソーセージ、大正コロッケ、牛鍋などを食べられる定食屋。


貸衣装屋と写真館もあったら良い。ただ仮装して騒ぎたいが為にハロウィーンに新宿や渋谷が人で溢れかえる。駅前に一日2千円程度で昭和初期の服装やら半被やら、バカボンのパパの腹巻とモンペやら、バカボンの浴衣やら、イヤミのカツラやら、そんなのを借りて着て街を歩けたら街並みが一層、面白くなる。



和菓子屋のサブレは美味かった。サブレの形をもう少し工夫しても良いので無いか。食べ物や手軽に買える雑貨の魅力に乏しい。景観を楽しませるだけではなく、商店で何かを買ってもらわないことには潤わない。頑張れ、青梅。