欲望のバージニア

 

禁酒法時代のバージニア州フランクリン郡で密造酒で荒稼ぎをするボンドュラント三兄弟の話。原題はLawless。和訳すれば無法なんだろうが、禁酒法なんていう法律が有ったから生まれた物語。

 

実話に基づいた映画だそうで、孫のマット・ボンドュラントが祖父や大叔父の経験を小説にしたものなのだそうだ。

 

人殺しも厭わずに、禁じられていた密造酒製造販売で田舎で幅を利かしていく様を描いている。密造酒のように後に合法になるものなんて、過去の価値観の問題でしかないのだから構わんように思う。大麻なんかも何十年後には似た扱いになってるかもしれない。

 

今の世の中でも、酒だけでなくタバコを非合法にしたら人を殺してでも売り買いする闇商売が蔓延る世の中に戻るのだろうか。そうなるだろうな。酒やタバコ程度では、私はなくても困らないという人はそれなりにいるかもしれない。もっと普遍的で中毒性があり、なくても健康に短期的な悪影響が無い、それでいて無くなった方が健康になれるものならばどうだろう。砂糖を非合法化したらどうなるのか興味深い。

 

世界のサトウキビが原因不明の菌に感染して数年で絶滅しかけ、僅かに産出される砂糖が希少嗜好品になった世界。世界中の誰もがまだ砂糖の甘さを覚えている世界。案外、モラルなんて簡単に崩れた争いが起きるのかもしれ無い。映画にならないかな。富裕層女性が血眼になったら怖いもんだ。

 

 

この映画は、悪党どもが男前で渋く描かれているせいで、保安官が悪党すぎて、価値観が倒錯しそうになる。しかし喉を裂いたり、脅したり、殺したりはいかんだろうに。実在の孫が描いた小説にボンドュラント兄弟の殺しは描かれているのだろうか。映画の脚色や演出だと解釈するのは大人のお約束なのかもしれないが真実はわからない。

 

末っ子ジャックの情けなく腰を抜かしている描写や目つきに覚悟が現れていく様など奮起し成長していく様子が丁寧に描かれていて、映画としては見応えがある。強烈な存在感を放つフォレストが喉を裂かれるシーンなど、呆然としてしまう。映画としては惹き込まれる娯楽作だ。

 

保安官役のガイ・ピアースが気障で気持ち悪くて非道すぎて、殺されても当然だと感じ始めてしまうから恐ろしい。自分の善悪の価値観が立つ土台の揺らぎやすさを気づかされる。

 

エンドロールを観ていると末っ子ジャック役のシャイア・ラブーフが先に来ている。次男役のトム・ハーディが格下扱いなのか、最初から最後まで映画化頓挫の危機も乗り越えて支援したシャイア・ラブーフの顔を立てたからなのか。本人曰く、トランスフォーマーなどの大作に出演する機会は恵まれたけれどもそれらは彼でなくても成り立つ作品ばかりで、この作品は主軸となる役の心理描写や演技に心を砕いた、とりわけ思い入れのある作品なんだそうだ。

 

そういや、長男であるハワードの手下感は何なんだ。長男の子や孫の心情や如何に。