既製品住宅に物語のある特別な内装を。我ら夫婦の為の雌雄山羊図日本画板絵

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京都の仏画師・日本画家の友人が描いてくれた待望の板絵が届いた。

 
高さ230cm、幅360cmという居間の全面押入れ収納に嵌めるシナ板引戸4枚に描かれた大きな絵だ。

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絵の題材は未年の夫婦なので雌雄の山羊。それぞれの生まれ月を象徴した朝顔と桔梗を足元に配している。左手には遠景に霞む岩山、右手には後方に連なる緑の丘を配して奥行きを出している。私が鹿や山羊といった偶蹄類がそもそも好きだということもある。

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板戸の白木地の余白をたくさん残して圧迫感を出さず、爽やかで軽い感がある。空間の大きさに配慮して大きく山羊を描いてくれている。間近で見ると大迫力で睫毛など緻密に描きこまれているのだが、居間全体を見ると適度な存在感。雄山羊の視線はちょうど窓の外を見上げる構図となっている。友人は全てを計算していたのか。

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家を建てると、システムキッチンのオプションを少しつけるだけで、10万円、20万円と増額していく。2箇所のトイレの性能を少しあげるだけでも10万円が飛んでいく。家の値段は簡単に1500~2000万円ほどかかってしまうその値段からしたら20万円なんて微々たるものだ。カタログから選んだ部品を組み合わせただけのプラモデルのような家は味気ないと思った。せっかく何年もローンを組んで建てる家なのだ。家族の物語のある絵があったら家に対する愛着が一気に増すと思った。
 
そこで我が家ではビルドインの食洗機や自動開閉の便座の蓋、浴室乾燥機などの自分達には不要とわかっている機能を悉く削り、代わりに新居が自分達ならではの家となるように内装に回すことにした。

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京都で国宝建築や文化財世界遺産の修復にも携わっている日本画家に、岩絵の具を使って伝統的日本画技法で家の一部に好きなモチーフで絵を描いてもらうことができるなんて思わない人も多いのではないだろうか。しかもシステムキッチンのオプションをつければすぐ増額してしまうような値段で。画家の側からしても伝統的花鳥風月画や仏画の制作や奉納から時には離れて様々なモチーフを描くことは楽しく、かつ副収入は助けになるらしい。そこに大きな需要と供給のずれのもったいなさを感じる。

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日本画や修復の世界で30代や40代が自分の名前だけで食べていくのは難しい。歴史と信用のある工房に属すと給料はさほど高くない。経済的なプレッシャーから筆を折る人も多い。京都にはそういう伝統技能を持ちながら、道を諦める人が多い。絵を描く能力のない自分からしたらなんとももったいない。是非とも手の届く範囲で都会にいながら少しばかり内装に特別な何かを求める人と、伝統技能に生きる様々な表現と少しの副業収入を得たい人と繋げたい。

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 私の好みの緑青や群青を使っていただいた。岩絵の具の利点は陽射しが当たっても変色しないこと。

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琳派などの垂らし込み技法が好きなので、シナの白木地なのに葉を垂らし込みで描いてもらうといった無理も聞いて頂いた。写真は白木サンプルに試し描きしたもの。

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構図やバランスを検討した際の下絵。

 

いやあ、しあわせ。

 

いつかまた、どこかの壁に私の好きな多肉植物とか、家族の好きな何かを描いてもらいたいな。トイレの天井に板絵を嵌め込むとか。妄想が膨らむ。