パリの少し裏を覗く

ひょんなことから、パリ生まれパリ育ちのアジア系の同僚と、その友人であるというフランス外務省勤務のこれまたアジア系のパリジャンと飲みに出かけることになった。


くだらない話が大半で飲み過ぎたこともあり殆ど覚えていない。それでも思い出せたことをいくつか。


あくまで一人の意見でしかないことを断っておく。


パリ生まれパリ育ちで言葉も教育もなんら引けを取ることはない彼。コンサルタントとして働き、今はフランスの巨大有名企業に勤めている。


アジア系であることで白人階級社会の壁を感じたことはあるか聞いてみた。答えは否。アジア系は総じて勤勉だと思われているので、彼は低く見られたことはないとのこと。ただ、アフリカ系、アラビア系は勤勉でない、教育水準が低い、犯罪を起こす比率が高いなどと思われていて少なからず嫌われ、疎まれているとのこと。


残念ながら最も嫌われているのはロマ、ジプシーとのこと。同様にルーマニア人も偏見の目で見られているらしい。日本ではジプシーは自由の民、吟遊詩人のイメージがありむしろ好意的に思っている人が少なくないという話をしたら驚いていた。


ちなみにアジア人は勤勉な分、お金を持っていると思われがちで強盗や恐喝の目標にされやすいそうな。酔っ払いながらも店間を移動する際も、この道は危ないからやめようなどというあたりに旅行者にはわからない治安事情が察せられた。


2軒目には、オペラにほど近い、日本食レストラン街の中にあるカラオケバーのような所に連れて行ってくれた。壁の棚にはボトルキープされたシーバスリーガルがずらりと並んでおり、かけられた札には日本の主要商社やメーカーの名前が並ぶ。店内では単身赴任の商社勤務の日本人サラリーマンと思しき男が気持ちよく踊って歌っていた。パリジャンの連れが、フランスでは日本人男性はモテるなどということを言う。それは流石に眉唾だろう、と目の前にいた日本語が流暢なアフロの黒人バーテンダーに問い詰めたら笑って流された。


日本人同僚がワインを飲みたいというのでワインリストを出してもらったら100ユーロ越えのものしか無いとのこと。パリジャンの連れはワインのバイヤーもしていたことがあるらしく相場に明るいそうで、ラベルを一瞥して「やめとけ」と耳打ちしてくれた。ワインに詳しくない日系大企業の皆様は良いお客様なのだろう。


1軒目で別れた外務省勤務の男と二時間後に3軒目で再合流すると、一緒に「第二彼女」という女性を連れていた。フランスでは人との出逢いを愉しむのだと都合の良いことを抜かしていた。大統領の不倫もそれはプライベートのことで関係ない、と国民が追及しないお国柄だからな。そんな国に男女交際や女性の不倫に一方的に厳しいムスリムが多く住んでいるのだから価値観の和合が大変なのは想像がつく。

4軒目にはブラッディーマリー誕生のバーという生演奏が流れるバーに連れて行ってくれた。隣のテーブルではやたら色気のある40歳に近そうな女性が黒レースのスカートとガーターのまま男性の膝の上に跨ってキスをしながら酒を飲んでいる。夫婦には見えない。退廃的で淫靡なパリ。