西荻窪 「こけしや」の日曜グルメ朝市

西荻窪に「こけしや」というフランス料理の老舗がある。そこが月に1度、第二日曜日に朝市を行っている。フランス料理屋の朝市と聞いてよく理解できなかったが嫁さんについていった。


外の駐車場に設営した机でパンやオムレツ、キッシュなどを提供し、レストラン店内はフードコートのように自由に座って食べられるようだ。その場で食べずに持ち帰る人も多い。


朝8時からなのだが、8時5分頃に着いたらすでに長蛇の列。子羊のアニョー480円、オムレツ、貝のスープ、キッシュ、ハヤシライス550円、カレーライス550円、スパゲッティ。フレンチではない料理が多い気がするも、そこらの定食屋と違いしっかりと作り込まれていて美味しい。



子羊のアニョーは肉一切れに480円というのもそれなりな値段だと思ったが、コースの中でメインディッシュとして出る肉料理なのだろう。味も品質も変わらぬ主役の肉を2つ頼んでも1000円というのはある意味、贅沢だ。



3時間の間にこれだけの行列ができて料理が出て行くのだから効率は良いのだろうな。午前中に朝市が行われ、午後も普段より遅れて13時からだが営業するのだという。追加で人員を雇うこともなく、月に一度の地域奉仕として早朝残業で頑張っていただいているようだ。


収支は確実にプラスだと思う。しかし、店のブランドは毀損しないのだろうか。



月に一度だから毀損するほどではないとも言える。昼や夜に落ち着いて食べたい客からしたら月に一度の朝市が足を遠ざけることにはならないのかもしれない。


しかし、私達のように朝市で初めて「こけしや」に来る客はどうなのだろう。通常の時間に食べに来たいとまでは思わなかった。朝市で安く食べられるフレンチレストランとしてけして高くないイメージで認識されてしまった。その一方で朝市が無ければ「こけしや」に行くことも無かったのも事実だ。その点、いざ何かの際にきちんとしたレストランで食事したいと思った際には「こけしや」が選択肢に上がるかもしれない。認知度を高める上では成功しているわけだし。「こけしや」を知り、食事よりもハードルの低い洋菓子を買う客が増える可能性は高い。


次に食べたくなったらまた朝市に来れば良いと思ってる客を通常営業時間に来させるには何が必要だろう。もう少し内装と雰囲気に手が掛かっていたら良いのかもな。そうしたらば、今度はこの雰囲気で落ち着いて食べたいと思うかもしれない。あの朝市の値段だから来るという客は、そもそも通常営業時間の客のターゲットではないということ。


洋菓子のレトロな包装デザインも気になるのだよな。鈴木信太郎氏によるものらしい。戦後間もない昭和24年に創業し、店名の「こけしや」は敗戦しても日本の伝統は残り続け皆に愛されるだろうとの願いからつけられたそうな。

かつては石黒敬七井伏鱒二丹羽文雄徳川夢声東郷青児田川水泡金田一京助棟方志功開高健らが集う「カルヴァドスの会」があったそうな。錚々たる文人の顔ぶれだ。


なんだかんだ「こけしや」を知るに至りまた行きたくなっているから朝市は成功だろうな。