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LaLaLand、手紙は憶えている、ザ・コンサルタント、マリアンヌ、人間の値打ち、聖の青春、永遠の0、

 フランス往復の機中で観た映画備忘録。

 

ララランド La La Land ☆☆☆

ミュージカルなんてものはワザとらしい唄や踊りの挿入に気持ち悪さを覚えるジャンルだった。アカデミー賞をいくつも受賞したという知識がなければ見なかったであろう作品。
 
これから職責がわんさか増えて、引継ぎして問題の多さに目眩がしそうになって、少し弱気になっていた時分、これに勝る強壮剤は無い。勝負を挑んでナンボ。失敗するリスクの無い仕事をこなす為に私は任されたわけでは無い。
 
社歴や人生経験の長い人達が上司になる私を見定めようと距離をとって眺めている居心地の悪さを感じている。自分を出していくしかない。自分が良いと思うものを試していくしかない。話は聞く。意見も尊重する。全ての責任は取る。何に勝負をかけるかは自分が決める。知ったことか。
 
音楽は力だ。映画も力だ。創造的な仕事は素晴らしい。愉しくて励まされて切なくなって、それが人生だと思わせてくれる。良い映画を観れた。
 
巷ではこの映画は賛否両論らしい。結局は平凡な話じゃないか、と。そう言われればそうなのだけれども、平凡な人生の困難に四苦八苦している我が身に少しばかりの力をくれるならばそれで良い。一言でまとめると「挑戦する人生を!」。心が枯れ始めたアラフォーのミッドライフクライシスに刺さる映画なのだと思う。
 
ライアン・ゴスリンの捻くれているくせに口角の上がる微笑が良い。

 

ラ・ラ・ランド (コンプリート・ミュージカル・エクスペリエンス)

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ザ・コンサルタント The Accountant ☆☆
会計士とコンサルタントの違いを知らない、あるいはザ・アカウンタントだと売れないと判断した配給会社は残念極まりない。
 
自閉症患者の可能性を賛美し偏見を戒めるくせして、会計士なんて一般人の受けが悪そうだからもっと食いつきそうなコンサルタントにしようという浅薄な偏見。自閉症患者に特殊能力を期待するようになるのも困った偏見だと思う。
 
アクション映画のわりに骨太に造られている。しかし気に入った女性は救い、義足で大勢の患者を救う企業のCEOは撃ち殺す。裏世界の資金の洗浄屋会計士である主人公は、凄腕の裏世界の殺し屋の弟を家族だからというこれまたマフィア的価値観で仲間に得て映画は終わる。なんだこりゃ。
 
悪が主役の映画。ベンアフレックが存在感がありすぎて見応え充分なアクションサスペンス映画だが、冷静に考えるととんでもないストーリー。この手の映画に内容なんてどうでも良いということなのだろうね。演技が上手い俳優とスリルのあるアクション、主人公の少しばかり暗い生い立ちと世の中の解った感。
 
観て損したとは思わない娯楽作。
 
手紙は覚えているRemember。☆☆☆☆
妻を亡くしたことを忘れるほど物忘の激しい90歳の老人が一通の手紙だけを頼りに、アウシュビッツ収容所で家族を殺したナチスの逃亡犯を探し出す旅に出る話。
 
眠気が吹き飛んだ。彼は自覚していたのか、操られたのか。
 
予想外の秀作。昭和は遠くなりにけり。それでもまだ作品を生み出し続ける第二次世界大戦の負の熱量の大きさたるや。
 
今のところ、2017年度のベスト映画はこれ。
手紙は憶えている [DVD]

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マリアンヌ Allied ☆
ブラピ主演。第二次世界大戦下の諜報員とレジスタンスの恋愛。
 
自分の物事の見方が歪んでしまったのか。素直にストーリーを受け取れなかった。ナチスの諜報員だと発覚した妻。それを信じて二人で逃げる道を選んだ夫の命を救うために自ら犠牲となる道を選ぶ妻。なんだかブラッドピットが都合の良い悲劇のヒーロー過ぎて白けた。
 
真相は知らんがブラッドピットとアンジェリーナジョリーの醜聞や親権争い、離婚騒動を見聞きして自分の中で家族を守る責任感や愛情に溢れた人間としてブラッドピットを認められなくなったからなのだろう。俳優の演じる作品と俳優の私生活を重ねてしまうのは映画鑑賞の仕方として間違えかもしれないが、それを想起させるブラピが悪い。
 
前回のフューリーといい、遠く過ぎた第二次大戦後を舞台に悲劇の皮を被った自己賛美的な作品に続けて出演するブラッドピットにウンザリしている。「A River Runs Through It」の頃のブラッドピットが好きなだけに反動的失望なのかもしれない。

 

 
人間の値打ち Il capitale umano。☆
イタリアアカデミー賞7冠のサスペンスという触れ込み。
 
大富豪と、中所得でギラついた不動産経営者と、恵まれない家庭と。誰もが自分勝手で自分が可愛くて、殺された男の家族に想いを寄せる人は誰もいない。
 
観客の娯楽の為に大富豪を悪者にはしていない。実話に基づいている以上、観客が好む形にはなっておらず。金持ちが腹黒いとは限らず、貧しい者が卑屈で小狡いことも多いわけで、どうせなら私は心の豊かな金持ちになりたい、とどうでもいい感想を浮かばせた作品。
 

これでアカデミー7冠って。。。 ニューシネマパラダイスやイルポスティーノを産み出したイタリアとは思えぬ。

 

 
聖の青春。☆
東の羽生、西の村山と謳われた棋士村山聖松山ケンイチが演じる。
 
村山という人物像が掴めず仕舞いだった。傍若無人に振る舞っているかと思えば羽生名人には終始、敬語。誰に対しても傍若無人なのではなく、自分が認める相手以外はしっかりと見下しているのだな。伏線からすると名人位を獲るのかと思ったが、痛恨の落手で負けて終わる。
 
実在の人物だし故人なのでとやかく言いたくないが、キングカズに語らせれば自己管理できずに何を勝利への執念だ、と。実在の人物だけに村山九段が本当に傍若無人な人だったのか、気になる。観客ウケを良くする為の脚色だとしたら失礼な話だ。 
 
3月のライオン」の主人公のライバルに小肥りの持病持ちの二階堂という青年が出てくるが、村山九段がモデルなのではないかとふと思った。
聖の青春 [DVD]

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永遠の0。☆☆
小説と受け止め方が変わった。小説を読んだときはあれだけ家族を愛していた彼がなぜ特攻に志願したのかという疑問を映画ほどには感じなかった。映画を観るとその疑問は深まる。
 
冒頭の玉砕シーンが無かった。飛行機の上で観たから飛行機が墜落するシーンは予めカットされていたのか。他にもあれだけ撃墜シーンをそのまま流しているのだから、物語の起点となるシーンをカットする意味はない。映画版ではあのシーンは描かれていないのか。
 
 戦闘シーンやセットが金かかっていてチープな合成感が少なかった。大ヒットした小説をもとにしているので張り込んだのだろう。

 

 この世界の片隅に ☆☆☆☆

童話絵本のようなタッチの絵で牧羊的に物語は始まる。戦時下でも紡がれる生活が丁寧に描かれる。

 

「夫婦ってこんなものなの」という主人公の旦那への問いかけへの答えを未だ思案している。旦那の深意を計りかねている。

 

天然でぼーっとしている「すず」ですら表情を失い追い詰められていく戦争。牧歌的に描かれて始まるからこそ、その対比も際立つ。

「ぼーっとしている」が英語字幕ではabsentmindedと訳されていた。mindfulnessとは逆の言葉だ。しかし座禅での心構えはmindfulnessではなく、このabsentmindedなのだと思うのだよな。私としては巷の意識の高いmindfulnessではなくabsentmindedを常日頃から習得したい。

 

私の中で「君の名は」よりも評価の高い2016年のベスト映画はこちら。