期待を外さない東京藝大祭と話題の神輿

 

 

仕事の合間に数時間ほど暇ができたので、上野の東京藝術大学の学園祭を駆け足で覗いてきた。

セネシオさんというたまにコメントを下さる方が以前、勧めて下さってかねてより見たいと思って半年以上前からカレンダーにメモしていた。

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1年生による創作造形神輿が中央公園で展示され、パフォーマンスが披露されるのだがそのクオリティたるや。発泡スチロールに着色しているそうなのだが、それにしてもなんたる作り込み。

 

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さすが名物になるだけある。担いで、揺すって、回転させて。ただの飾りではなく、神輿なのだよな。

 

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美術学科と音楽学科が対になって1チーム。それぞれ個性が出てて面白い。もちろん、声楽は唄う。カンブリア紀がテーマのこのアノマロカリスは体内から隠れていた人が出てくるパフォーマンスで観客を沸かせていた。

 

 

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工芸楽理の八岐大蛇の細部の造形が眼を見張る。作り込みは素晴らしいが、パフォーマンスは大人しめ。造形に勝負をかけている印象。

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こちらが大賞を受賞したビーナス。

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かたやデザイン・作曲科は暴走族風なテーマでパフォーマンスと笑いで観客を魅了した。

 

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それぞれのチームごとの法被も独自にデザインされたもので、これまた商業品水準。

 

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染織専攻の学生さんの作品。特定の素材や技法の世界を深く深く探求している。

 

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基礎的なデッサン力や造形力が高いとこんなもんが造られてしまう、という例か。もうこれは学生さんが教材を作ったようなもんだな。

 

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なんだろうね、この格好の良さは。骨とインナーマッスル剥き出しでドヤ顔。

 

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焼いたら陶器になるのだろうか。色違いの赤土で作って、焼き締めてくれないかね。そんなオブジェが私の部屋に欲しい。

 

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陶芸をする身としては、ついつい目がいってしまう数の少ないテラコッタ作品。普段自分が触れている同じ材料で、作り手に技倆があればこんな立体造形も作れてしまうのだよな。なんだか自分は資源を無駄にしているようで申し訳なくなってくる。

 

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石膏で型取りして制作したのだそうだ。よく見ると、確かに同じ造形。型取りでこんな精度で巨大な複製が作れてしまうとは。こんな象亀が、何十個も置かれた公園とか丘とか、見て見たいもんだ。

 

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牛と豚との三連作だった。

 

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細部まできっちりと。

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立体造形は写真撮影歓迎な場合が多い。可能な限り写真撮影が可能か聞きながら撮っていたのだけれども、この作品は聞くことができず自信がない。存在感がすごい。他にもたくさん素晴らしい絵があったし、回れなかった校舎にもさらにたくさんあったのだと思われる。

 

 

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様々な出店も出されていて、その看板も藝大品質。まぜそばやわらび餅の絵は遠くから見ると写真のようだった。

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さりげなくカラーコーンに地蔵さんがはまっていたりと、あちらこちらにニヤリとしてしまう。

 

丸一日かけてじっくり回りたかった。

 

自分の美意識や方向性が固まっていて、もっと作りたい、時間が足らん、という創作意欲が溢れ出ているような人が大勢いる。中退はせず辛うじて作品は出したものの投げやり感の漂う人もいる。

 

5年後も作品制作をしている人は1割もいないだとか、卒業後は半数が行方不明だとか、就職率は1割だとかいろいろ言われる東京藝大。美への情熱だけでなく美やその道に対しての葛藤も苦悩も含めて混沌と表出しているから美大の学祭や卒展は見る甲斐がある。

 

これだけ技倆が優れた人達の殆どが美術作品制作だけで食べていけないってのはなんとももったいないと常々思う。素人アート好きと、美大卒を繋ぐ効率的な仕組みができないものだろうか。ハンドメイドマーケットやCreemaのような手作り量産品市場ではないのだよな。