映画「42 -世界を変えた男」

 

副題が蛇足でしかない。邦題のセンスのないこと。ありきたりの安っぽい感動ドラマ感を副題で抱かせる。内容は全くそんなことないのに、安い副題で足を引っ張っている感がある。

 

黒人で初めてメジャーリーガーとなったジャッキー・ロビンソンの実話映画化。全球団が42番を永久欠番にするほど敬意を払われる男。誰しもがその栄誉に納得するほど、初の黒人メジャーリーガーとしてぶつかる慣習は苦痛に溢れる困難な道だったのだろう。

 

映画「しあわせの隠れ場所」を思い出したが、あの作品は私の心には全く響かなかった。裕福な白人女性がホームレスの黒人少年がアメフト選手になる夢を後押しする話。素晴らしい美談なのだろうけど、サンドラ・ブロックの演技が自己陶酔的に思えて感情移入できなかった。

 

一方の「42」の主人公を演じたチャドウィック・ボーズマンが良い。しかしそれにもましてブランチ・リッキーを演じたハリソンフォードが燻し銀すぎる。ハリソンフォードが最もカッコ良い映画ではなかろうか。

 

脅迫や非難を飲み込みおくびにも出さず、どっしりと構えながらも、リスクには機敏に微細に対応することも厭わず、自ら現場に足を運び、勝負どきには時には声を荒げガツンと言わしめる。組織の長たる者の理想像に思える。

 

 

身の程をわきまえない彼ら黒人に思い知らしめてやろうという差別側白人の勘違いとその滑稽さ。考え違いを思い知るべきは自分自身だとは本人自らはなかなか気づけないのだろう。排斥しようとする白人からは今に黒人に駆逐されるだろう、という怖れも混じる。頭の中の知識として黒人への差別が根強くあったということは知っている。しかしこうして活写されると、こんなことがあって良いのかと唖然とさせられるし、憤る。

 

この映画は固定概念や偏見、先入観に対して、自分がどれだけ思い違いをしているかを如何に自覚できるか。その困難さを教えてくれているように思う。

 

認めたくなくて目を逸らしたい不都合な事象とはなんだろうか。

  • 日本は貧しくなっていく可能性が高いこと。より一層、中国に買われていくこと、技術でも後塵を拝していく分野が増えること。
  • 日本産の品質が他よりも優れていないこと
  • 日本がもはや安全とは言えないこと
  • 日本が海洋資源を乱獲し続けて枯渇の主犯であること
  • 昨今の日本人が他国に比べ勤勉でも優秀でもないこと
  • 恵まれた境遇に胡座をかき、世界の貧困や苦難から目を逸らしていること
  • 自分が世間のIT の流行についていけなくなりつつあること
  • 十分に進化したAIに業務で勝てないであろうこと
  • 仕事の上でまだ若さと勢い頼みであること
  • 古き良き時代への憧憬が生まれつつあること
  • 陶芸は冷淡に言えば資源の無駄で非効率で廃棄物が環境負荷を生む道楽であること
  • 他国や人種に偏見を持っていること
  • 自分の腹が醜く太っていること
  • 加齢臭が出始めていること
  • 自分はもう若くないということ
  • 自分はさほど善良ではないこと
  • マンゴー殿が15年以内に死ぬだろうこと