パリからの日帰り遠足に穴場、シャンパーニュの旧首都プロヴァン。

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Provinsというイル・ド・フランス県の南東部の小さな街へ出掛けた。シャンパーニュ伯爵領の首都として栄えた中世の商業都市だそうだ。プロヴァンというと南仏のプロヴァンスと勘違いされることが多く、パリに住むのが長くとも知らない人は案外、多い。

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11世紀の街並みを残している世界遺産の小さな城塞街なのだと説明しても、ふうん、そんな所があるなんて聞いたことがない、と反応されることが多かった。

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まずは観光客がそもそもまばらにしかこの終着駅では降りなかったこの街で、さらにその数人が向かう方向とは逆の新市街にある古い教会から訪れてみた。

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ルネサンス期を思わせる巨大なフラスコ画を装飾する木製の祭壇。大きく割れることもなく、まだ油分を含んでいるような艶を持っている。このレベルのものが、さほど知名度もない観光地街の外れにある教会にあるのだから全体の美術芸術の裾野の広がりと分厚さを感じさせる。

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浮かし彫りの木彫画も見事なものだ。

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この街中で2、3箇所の教会を回ってみたものの、ここほど立派な装飾や絵画、ステンドグラスを備えた教会はなかった。

 

このステンドグラスの左端の一角だけでも家の大広間の窓にでも掛かっていたらさぞ素晴しかろうに。宗教画を無理に日本の木造住宅に嵌めるぐらいならば、和風柄のステンドグラスを作って家の内庭に向いた窓に嵌めたい。輪郭はさほど細かくないし、顔や細部を画家の友人に描き込んでもらったら見応えのあるものになるのではなかろうか。

 

抽象画のようなステンドグラスも見たが、輪郭だけで描いたこのステンドグラスの作風は初めてかもしれない。精緻に作り込まれたゴシック教会建築に抽象化され過ぎた図案は合わないと思っているのだが、これはその匙加減が丁度良いのではないか。

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横廻廊のステンドグラスはこれまた作風がガラリと変わり、並ぶ三窓が連続とした色合いになっていてこれもまた遠目から見て素晴らしかった。


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教会を出て、坂道を登り新市街へ。城壁に囲まれた典型的な城塞都市へ。テラコッタの屋根にはこんもりと苔が群生している。ここまでのコロニーがテラコッタのような無機物の上に育つにはどれだけの年月が必要だったのだろうか。

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丘の上の広場を囲むようにレストランが並んでいた。ここらの家屋は木組みが露出していて、少しドイツやオランダ的雰囲気がある。木組みと土壁の間が剥離して隙間が生じたりしてないところを見ると寒暖差と乾湿差が少ないのか。いや、経年後にメンテナンスを重ねて隙間に壁を詰めたからかもしれない。


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サラダ、ガレットとクレープのセットを食べた。12€。ガレットにはほんの少しばかり辛いチョリソーとブリーチーズが挟まっている。ブリーチーズはここら一体の名産らしく、ガレットが一段とクリーミーな味わいになって美味しかった。 f:id:mangokyoto:20190310215714j:plain

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クレープもこれまた絶品で、山盛りの生クリームを別で出してくれるのが有り難かった。クレープよりも生クリームのほうが甘みが少なく軽く、たっぷりと生クリームを食べられてしまって危険この上ない。

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Provinは薔薇の産地として有名だそうで、薔薇を使った土産物が並ぶ。薔薇の香水、薔薇の石鹸、薔薇のコンフィ、薔薇の塩、薔薇のキャンディ。

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思わず薔薇のマスタードを買ってしまった。美味いのかね。帰国したら、低温真空調理したハラミステーキと合わせてみようか。

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城壁の外には緑の穀倉地帯が広がっていて長閑だった。城壁の階段に腰掛けて30分ほど放心する。この頃は誰から身を守っていたのか。

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三月のパリ周辺にしては珍しい快晴。