真柏のための陶蟲夏草鉢の注文制作3

10月上旬


しばらく間が空いてしまったがようやく最後の工程作業ができた。


釉掛けはあれこれ悩んだのだが釉薬を掛けずに焼締にすると薄く強度のない殻がさらに脆くなってしまう。しかし全て釉薬を掛けてしまうと土っぽさ、風化劣化した風情が無くなってしまう。

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特に脚は釉薬を掛けないと簡単に衝撃で折れてしまいかねない。

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そこで思案した結果、腹側は比較的厚くマグネシヤマット釉を筆塗りして脚が白く引き立ち強度も出るようにし

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殻側はマグネシヤマット釉を筆塗りした後に縁の釉薬を剥がしてヒビや割れを露出させた。一旦、釉薬を塗ってから剥がしても釉薬が素地に染み込むので全く釉薬を塗らない焼締とは風合いも強度も異なるはず。

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さあ、釉薬で白くなりながらも縁の露出で風化した感じが出るだろうか。白い釉薬は風雨にさらされ、土が染み込み貫入が入っていってくれることも期待している。


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土台にはシリコンカーバイドを少量混ぜた金ラスター釉薬を少し厚めに筆塗りした。うまく焼成されれば発泡して表面がボコボコになるはず。そうしたら表面に苔を貼り活着しやすくなる。


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崖の下側は釉薬を筆塗りした後に荒く剥がして割れ目の中に釉薬が残るようにしてみた。面倒なひと手間をかけているのでうまく効果が出て欲しい。


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できる限りのことはした。電気窯とはいえ50%ぐらいの確率で期待通りにはいかないので、ここから先は無事に焼き上がることを祈るばかりだ。

正直に言うと愛着が湧いてきてしまった。もし注文主さんのお気に召さずとも自分で引き取って多肉植物を植えてみたい作品になってくれそう。紫太陽の群生をボコボコとさせても良いし、カランコエファングのような茎立ちする大きな株の岩付き盆栽仕立てにしても楽しそう。


他の作品も集まって満杯になり窯に火が入るのはいつになるだろうか。11月には焼けると良いのだが。釉掛けが終わるとあとは本焼きの日と出来上がりをただ待つだけになる。楽しみで怖い期間。


作業時間1時間。

朝顔 天上の蒼

もう10月に入ってから突如咲いた朝顔。素晴らしい青。なぜこの時期に、しかもなんという青。

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青い花といってもなかなか本当に青い花というのは少なくて、多くが紫だったり紺だったりする。そんな中でこの朝顔は文句無しの青と言えるのではないか。

朝顔、紫陽花、瑠璃茉莉、露草あたりが納得の青い花だと思っている。

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逆光を透過すると細首の白さもまた美しい。ベタ塗りよりもグラデーションがある方が引き立つ。


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吸い込まれるような蕊。

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ヘブンリーブルー」をさらに改良した「天上の蒼」という品種。名前負けしていない。


来年の夏は庭に群生させてみたい。難点は街灯が近くにあると短日性なので花が咲かないこと。

カフェ空白地帯にワンコokのお洒落カフェ「RAD BROS CAFE

中央線の北側沿い、環七を東に渡ったところはカフェの空白地帯と言っても良い。そこに何やらお洒落なカフェができていた。8月下旬にオープンとのこと。昔は中華食堂があったところだ。

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何やらどこぞの雑誌かサイトに取り上げられているのだろうな。やたらお洒落で感度が高そうでリア充そうな若い人達が多い。通行人として来るような場所ではなく、明らかにこの店目当ての客だ。高円寺駅から来るのか、中野駅から来るのか、どちらから来ても遠い中間地点。

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RAD BROS CAFE。元々は赤坂で営業していて、店主が高円寺在住ということもあり高円寺に移転したらしい。赤坂時代のお客さんが高円寺にも足を運んでいるのだろうか。


とても不便な立地にも負けず、開店早々にお客さんで賑わっている。殆どが高円寺の外から来られているお客さんと見受ける。赤坂時代の常連客だけとは思えない。何かメディア戦略のようなものがありそうな気がする。

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グルテンフリーのケーキと珈琲がウリだそうだ。それで若い女性が多いのか。

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珈琲味のチーズケーキを頼んだが私としては盛り上がる点はグルテンフリーではなく「練り込み」な模様。

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アメリカーノとわざわざ呼ばせる珈琲。そんな尖った味でもなく甘いケーキに合う。次はカプチーノを飲んでみたい。

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マンゴー殿の散歩に絶妙な好立地にあるのだよね。散歩の頻度が増えそうな予感。WiFi完備でPC作業も歓迎だそうだ。なかなか利用価値の高いカフェができてくれた予感。


10:00〜20:00

胴繋ぎ山羊鉢、一角獣頭骨に施釉

数時間の暇を見つけて作陶。

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山羊鉢に釉薬を掛けた。きちんと白く発色して欲しいので厚めにドブ漬けした。膝などの一部だけ薄らと下地の黒土が透けるだけが望ましい。

なかなか焼きにくい形状。目土を使って上手く焼かないと棚板にガッツリと癒着して壊す羽目になる。

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後脚と尻尾。そして少しばかり写実的な水抜き穴。だってオスだもの。水遣りをした後、ここから水が出るのはシュールに感じるか、下品か、合理的か。

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今までの山羊鉢は角を地味な黒系にしていたが、今回は色気を出して角を緑青銅釉にしてみようかと思っている。おそらく暗緑色になるのでそんなに鮮やかになるわけではないと思われる。


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一角獣頭骨にも施釉。マグネシヤマットのドブ漬け。


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なんとなく前回、残りの時間で作ってみた鉢の削り作業をした。

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赤土の上に白土を被せ、罅割れさせて割れ目から赤土が見えるようにした。指痕だらけで凸凹していること自体は問題ではないのだけれども、全体的に肩と胴のラインがイマイチ。

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ただ、深く長く入った割れ目は面白いかもしれない。そのまま隙間として残したら土の渇きがとても良い植木鉢になりそう。フランシシーを植えたいのだが適合するだろうか。

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やはり、この細かい罅の表情を残すには釉薬を掛けずに焼き締めにするのが良いかね。しかしそれだとのっぺりとしてしまいそうなので鉄釉系を筆塗りした後で釉落としで全て削り取るのも一案。



注文したシリコンカーバイドが届くので、次回はようやく制作依頼を受けている団子虫岩付鉢に釉掛けできる。

マグネシヤマット釉、金ラスター釉、シリコンカーバイドのコンボで土っぽさを残した仕上げにしたい。如何に。

上諏訪のアール・ヌーヴォー壁装飾銅板

2011年以来の東京都心の震度5の地震。もう何が起きるかわからんな。今週末は防災点検しよう。我が家の膨大な陶器鉢はさらに大きな地震が来たら破損は免れないだろうな。


諏訪で撮った写真を削除、整理している中で見つけた上諏訪駅の周辺で撮った数枚。これは記録を残しておきたいと思った。

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チェコの画家アルフォンス・ミュシャのような図案の銅製の装飾板。

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緑青の生え方といい、細部の装飾といい素晴らしい。銅で鋳込めと言わずとも陶器でも作れるはずだけれども、全く作れる気がしない。

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そんな逸品がなんてことない駅前の通りの、床屋のあのぐるぐる回る看板の横にあった。竣工当時に設置されたものだとしたら35年前な訳で、とりわけアンティークな代物ではない。大正や戦前でもない昭和の時代にこんな銅板を嵌めるなんて酔狂なオーナーがいたのだね。

検索してもそれらしい情報が見つからない。

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道の向かいにもなかなかな古めかしい建物があった。江戸東京たてもの園に加えられるべきレベル。

諏訪は散策するともっと面白い建物がたくさん見つかるのかもしれない。


次回こそは酒蔵で試飲巡りして定休日だった古材バンクに併設されたカフェRebuildingCeterも覗いてみたい。



花屋カフェ「On Flower」

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東中野駅徒歩数分にOn flowerという花屋兼カフェがある。以前も2回ほどお邪魔したが再度立ち寄らせてもらった。

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洋花はあまり名前がわからないのだよね。カーネーションだろうか。

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鶏頭にも様々な色があるのだね。

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飾りの古いタイプライター。アンティークに薔薇が似合うように感じるのは先入観が半分かもしれない。

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お店の商品がカフェの内装装飾を兼ねているのは良いと思っている。

仕入れた商品の陳列を兼ねて空間を効率的に装飾できるし

飲食しながらお客さんに商品を物色してもらえるし

回転する商品によって装飾の新陳代謝を図れるし

商品の世界観が店の内装の世界観となる

核となる再入手が困難なものは非売品にすれば良い

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お盆と皿を兼ねたスタイル。なるほど。


バナナケーキはなかなか中身に密度のある味だった。


箱根美術館の陶器 火焔式土器など名品揃い

「陶器を見に来たかったわけね」と妻に言われた。いや、箱根美術館の苔庭を一度は見たいと思っていたのであって箱根美術館の展示物が殆ど陶器で、箱根美術館が苔庭の綺麗な陶器美術館だとは知らなかった。コロナ禍なので苔庭を歩くのも密にならず良かろうと。そこは信じて欲しい。

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図らずも素晴らしい陶器が多くて私は満足だった。もしかしたら私だけが満足だった。

仁清焼っぽい感じだろうか。よく知らないけれども。

現代人の好みや感覚にルーシー・リーの陶器がとても合うように、この江戸時代の抹茶碗も現代人の好みに合う色使いだと思う。青、浅葱、金。夏に使いたい清涼感に溢れている。

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青海波が細かいこと。

 

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粟田口というのは私がかつて住んでいた京都の天智天皇陵のある御陵から九条山を越えて南禅寺を右手に三条の坂道を下ったところ、神宮道らへんを指す。昔はここらへんでも盛んに陶器が焼かれていたのか。

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陶器の壺と言われたら新興宗教団体に騙されて買わされるものの象徴のような悪いイメージもあるけれども、こんな大きな、しかも素敵な陶肌だったらそりゃ高価だろうな。こういうのは欲しい。なんちゃってでも似た雰囲気の壺を焼けるようになるのが夢だ。薪窯で自然釉というだけで素人にはとんでもなくハードルが高いけれども。

 

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こんな渋黒な陶肌の蓋付き壺も素敵。なんと平安時代のモノらしい。どことなく須恵器の面影が残る。私が死んだら骨はこんなんに入れてもらえたら嬉しい。自分の骨壺は生前に作っておくのもありかもしれない。

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緋襷の襷多め。

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随分な骨董なのだろうけれども模様の間隔が若々しいというか。

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思わず真似て作りたくなる造形と装飾。

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埴輪もあった。ウサギだとさ。なかなか斬新なデフォルメ。両前脚と両後脚を一つの筒にまとめるという発想はなかった。

 

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「天冠をつけた男子」という埴輪だそうで、この美術館の収蔵品の中では重要文化財登録がされていて最も文化財的には価値が高いということになる。これが。失礼だが。

 

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私としては圧倒的にこちらのほうがすごいと思うのだよな。ほぼ完全な火焔型縄文土器。国宝の火焔縄文土器とどう違うのかと思えるほど。そして何より大きさに驚いた。

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なんと4500~5500年前の代物だそうだ。新潟県出土ということは十日町市の縄文遺跡だろうか。

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美術館員さんに伺ったところ、蹴轆轤も発明されていない時代に紐づくりで滑らかな状態の壺を作り、その上に粘土紐で可飾したらしい。4つの突起も後から付けたそうだ。強度的には弱いので突起は持つための把手ではない。

 

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分厚く作って、木のヘラなどで溝を掘ったようにも見えるのだがな。しかも縄文土器の特徴は左右対称ではないことだそうだ。とても有機的で不規則だけれども遠目に観ると端正な形をしている不思議。

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このフレアのような輪っか状の部分が好み。こんな大ぶりの花器を黒土の焼き締めできちんと強度を出して作ってみたい。母から頼まれている花器制作を既に1年手つかずで放置している。