花見の気分など薄れた頃になっても山の陰には八重桜が満開に咲き誇っていた。人間の花見への狂騒など無縁かのように。夕暮れに仰ぎ観るそれは妖艶。


山桜には何か重量感というか貫禄のようなものを感じる。


染井吉野はクローン故の脆さなのか、実は寿命は平均して百年も無い。幹は数十年で手軽に桜林を作るのには都合良いが絶えず苗木を植えて更新を図らなければ同密度の桜林は維持できない。自重に耐えかねて朽ちていく。


山桜は樹齢2000年を超えるといわれる神代桜や樹齢1500年を超える淡墨桜、樹齢1000年と言われる樽見の大桜樹齢千年などの長寿の銘桜が多い。百年経っても支柱など無しに見事に枝を広げる。染井吉野よりも花弁の色が濃い品種も多く、一本だけで見栄えがする。そんな山桜が好きだ。桜の野生種のひとつ、江戸彼岸から派生した紅枝垂桜が最も好みである。桜は花柄が長いので、梅と違い下に向いて咲く。それを見上げると最も密度高く眺められるので枝垂桜の樹高は高いほうが良い。柳のような柔らかな曲線を備えているという点でもやはり枝垂桜か。


因みに京都の寺院に植わる桜はどれも山桜系品種だそうだ。染井吉野の品種作出は比較的新しく、江戸から敢えて取り寄せる京都人など殆どいなかったのだろう。


好みの桜十選
1.平安神宮の紅枝垂 http://d.hatena.ne.jp/mangokyoto/20110409
2.醍醐寺 http://d.hatena.ne.jp/mangokyoto/20110403
3.疎水沿いの菜の花桜 http://d.hatena.ne.jp/mangokyoto/20110411



思い川桜
御殿場桜は矮小で鉢植えでも容易で花付きも良いらしい。
紅一重枝垂れ桜
仙台屋桜 縁がほんのり色づく