苔寺 西芳寺

京都盆地を東から西へ。祇園から松尾大社まで四条通を延々と自転車で横断した。京都盆地を東西に往復してざっと30km。それもこれも念願の苔愛好者の聖地、苔寺の為。伏見稲荷と並んで、一押しの日本的な景観ではなかろうか。さらに、見て歩くだけの観光に飽きているならば写経、読経ができるのも興味深い。苔が好きならば春雨や秋雨の時期に是非お勧めしたい名所だ。さもなくば拝観料3000円は高く感じるかもしれない。


往復はがきで参拝を申し込み、指定された時間にいかねばならんので今まで敷居が高く、行かずにいた。京都に越したこともあって、ようやく訪れる機会を得た。



苔寺では庭の拝観だけはできないようで、必ず参加者は読経と写経をせねばならぬきまりになっている。しかしどうやら殆どの参加者は読経写経には興味が無いようで、その様子がなんだかおもしろかった。



遠方から訪ねてきており、他にも松尾大社鈴虫寺など回りたい参拝者はなんとか読経写経を早く済ませて庭を見ようと工夫をしている。1時からと案内状には書かれているのだが、実際には12時半から開門する。早く入館すれば写経を既に始められるので時間を節約できる。また、筆ペンを持参すれば、墨を摺る手間も筆先を揃える手間もいらず、より早く写経ができる。


まだ半分も写経しないうちにぞろぞろと皆がうす刷りの般若心経を墨でなぞったものを納めていく。坊さんも無理に写経を終わらせなくても良いと言っているので、数行書いてさっさと出て行ってしまう人も多い。なのでこちらもえらく心が急かされてしまった。写経を終えたものから庭を拝観できるが、別に写経に時間がかかっても拝観時間が短くなるわけではない。なので苔寺を存分に満喫するならば、後ろのほうに陣取って心を落ち着かせて、ゆっくりと写経をし、人もまばらになった頃に庭を廻ったほうが苔庭の幽玄さを味わえて遥かに良い。



兼六園の苔も見事だったが、西芳寺苔寺と呼ばれるだけの凄さがある。木々の根元を細葉翁苔の巨大なコロニーが粘菌のように覆っている。細葉翁苔自体がなかなか寺社仏閣でも見かけることが少なくなった苔であるのに、それが非常に発達したコロニーで繁茂しているのは壮観。細葉翁苔を他の苔が取り巻いており、苔の海に苔の島が点在するかのようである。



ホソバオキナゴケ。

国指定特別名勝の庭の池には苔で多い尽くされた島もあり、鬱蒼としている。







苔の印象がまた変わるような景観だ。



120種類以上の苔が群生しているらしい。



こちらはハイゴケ。

マクロレンズを持っていないことが悔やまれる。



これはギンゴケ。

ちなみにここ西芳寺でも御朱印を頂けるが、こちらも風変わりで見開き両頁を使う僧侶の横顔をあしらった絵のようなものだった。