身が痺れるような冬の寒さ。それにしても奈良に新春を告げる風物詩と形容される若草山焼きだが、まだ冬の真っ最中で春の気配などどこにもない。若草山はここ数日の晴天続きで乾燥しきった枯れ草で覆われている。
5時頃から人が集まりだす。屋台が立ち、甘酒やらを飲みながら芝地の鹿の糞が見えなくなるまで待つと、松明を時代行列が運んでくる。そして篝火に移したところで花火が始まる。
尺玉が何発も上るほど豪勢な花火で鹿を象った変わり玉など堪能できた。遮蔽物のない枯れ草山の真上に打ち上がるので間近で観る迫力がある。なにせ尺玉が炸裂する際には全身に衝撃が届く。
いよいよ火が一斉に着けられる。数百人の消防団員の管理の下で行われるので、至って安全で刺激に乏しいものだと予想していた。しかし間近で観ると身の丈以上の炎が立ち、斜面を燃え上がっていく。
祭を観終わると、またひとつ季節が進んだような気分になる。時が刻まれたというか、一区切りついたというか。祭は五感でもって時の歩みを体感させるためのものかもしれない。とりわけ、冬の祭は身が引き締まる。
若草山焼きを見るなら駅前でレンタサイクルを借りるのが良いようだ。食事をするのに奈良町の店も選択肢が多くて良いし、興福寺、東大寺、春日大社などを廻るには歩くには距離がありすぎる。バスでは小回りが利かない。若草山焼きを観るのに遠くから全体を観るのも近くまで寄って観るのもそれぞれに魅力がある。近くで観るならば特設ステージ前が良いようだが、斜度があるので場所取りは別段いらないようだ。