興福寺国宝館

興福寺仏像館は好みの仏像が粒ぞろいで素晴らしかった。歴史的な価値はあるのだろうがよくわからない仏像と言うのではなく、素人目にも唸ってしまうような国宝、重要文化財が揃っている。しかも陰影を浮き立たせるように照明が当てられており存在感がある。興福寺国宝館の後に奈良国立博物館を訪ねると品数は多いものの見応えの無さにがっかりしてしまう。


木造金剛力士立像
正面から見ると目鼻が中央によっていて違和感がある。しかし横から見ると筋肉の緊張感と視線の鋭さには圧倒させられる。


木造法相六祖坐像
興福寺法相宗の興隆に貢献のあった学僧の六体の像なのだがそのうちとりわけ玄賓像の表情の写実的表現が素晴らしかった。鎌倉時代の国宝で、当時は量感を重視した不自然に肉厚な仏像が主流だったなかで、虚飾の無い血の通った険しい表情の像は際立つものがある。スター性のある阿修羅像や見目麗しい菩薩像と比べてしまうと気難しそうな貧相な衣の仏僧像でしかないからか、絵葉書には当然無かった。


天燈鬼像
通常四天王に踏みつけられた姿で登場するだけの邪鬼だが、ここでは燈籠を支える役割を得ている。二本の角、三つの眼を持ち愛嬌のある表情で肩の上に燈籠を担ぐ。腕の太さ、浮き出た血管、四肢のバランスがとても良い。天燈鬼の絵葉書を買おうかと思ったのだが、ハイライトが白飛びして貧相な写真だったので断念した。他の写真は良いのになぜ天燈鬼像だけこんななのか。