春鹿 日本酒

ここ数年、自分の嗜好の変化を感じることが多々ある。


酒に関しても好きというほどではなかったし、強いて選ぶなら甘口の酒だった。ベルギービール「Grimbergen」、アルゼンチンの「Malbec」ワイン、テキーラ「DonJulio」などいくつかの好みがある程度で日本酒はどちらかというと最後にくる。


何かのきっかけに自分から欲しいと思わないと駄目なのだろう。そう思うのが随分人より遅かったのかもしれない。


春鹿の酒造を訪ね、小さなガラスのお猪口を400円で買い求め、5種類の利き酒をすることにした。ラベルでも売り文句でもなく、利き酒で一番好みのものを買おうと思った。



「超辛口」はどうやら辛すぎるようで自分にはしんどい。
大吟醸」。ふわっと広がり後まで残る芳醇な香は素晴らしいに違いないのだろうけど、日本酒臭さでもある。
生原酒の「新走り」も「しろみき春鹿」も酸味が鼻につく。
最も気に入ったのは「極味」だった。辛口なのだが口をつけた際に日本酒らしさを感じるが、その後に日本酒臭さがすっと引いて後味が爽やか。実は一番安い酒を選んでいたようで、自分は安上がりにできているものだと溜息。熱燗で美味しく飲めると言うのも良い。冷酒の状態で既に好みであるのに熱燗も楽しめるなんて。


以来、家で隙を見てはおちょこについで朝と晩と飲んでいる。思うに日本酒は器を楽しめる酒だと思う。ワインはどちらかというと料理との組み合わせを楽しむのが主で、ワインごとに適したグラスはあれど器の素材をあれこれ楽しむものではないように思う。一方で日本酒は竹杯で飲んだり、錫のちろりで燗して飲んだり、陶器の杯に注いで陶器の風合いの変化そのものを愛でたり。



日本酒の旨さが少しわかってきたような気分。