奥穂高温泉 槍見館

久しぶりに感動する宿に出会った。褒めちぎってやりたい。槍ヶ岳の望める開放感抜群の河原露天風呂も只管感心するばかりの料理も素晴らしいが、結局満足度を決定付けたのはもてなしの心地よさ。Back to Basic。基本が結局は差を生むのか。


14時過ぎに到着したのだが、丁度チェックインする客が重なり随分と待たされた。一組一組丁寧に案内しているのか、囲炉裏の横で半時間も待ったのではないか。こんなに待たせるならば、もっと従業員はいるだろうに他の案内人をあてがってくれれば良いものをと機嫌は悪くなっていく。人気宿か知らんが、人気に胡坐をかいとりゃしないかとさえ思うに至る。そう、小生は心が狭い。


囲炉裏があり、頭上に太い梁が渡された部屋に案内されて気を取り直し、早速風呂へ。4つほどの混浴露天風呂や貸切露天風呂をはしごして2時間ばかり楽しんだのではなかろうか。そして腹が空ききった頃に夕食を頂く。


ここでまた従業員の方と接点を得た。給仕をしていただいた女性は初めてお会いしたのだが、まずチェックイン時に待たせてしまったことを侘びる。そしてその後、給仕して頂いた男性従業員もしつこくならない程度に再び待たせたことを侘びる。そしてさりげなく高山祭のことなんかを聞いてくれる。もうこれだけで心の狭い小生はすっかり懐柔されて槍見館贔屓となる始末。複数の従業員が既に情報をしっかり共有しているのが流石。


翌日の朝食時にも男性従業員と話に花が咲いた。こちらが食事の素材を聞いたのだと思うのだが、その後槍見館で育てている米の話やらに話が飛び、花粉症持ちには紫蘇ジュースがお勧めだとわざわざ裏から持ってきて飲ませてくれた。気に入った旨を伝えると在庫がほぼ切れているが一本用意してくれると言う。


朝食後にも従業員の客への感謝として宿泊客参加での餅つきが行われた。杵を手に記念撮影してくれたり、それをチェックアウトまでに印刷して渡してくれたり心遣いが溢れている。


言葉に起こしても大したことのようには書けない。しかし全てが自然で心地良く、客と従業員の会話が楽しめた。丁寧だが温かみがあるのだよな。距離を感じさせる丁寧なだけの冷たい接客とは大きく異なる。男性従業員の一人は滋賀の高級ホテルで8年勤務していたホテルマンだとのこと。一流の本職がさりげなくいる。風呂も食事も素晴らしいがやはり接客業は接客が最も重要なのだと当たり前のことを再認識。