オバマとオサマは似たり寄ったり

オバマは大統領選で、それまでのブッシュのネオコンを土台にし「悪の枢軸」を選定して武力に訴えて行く外交路線を放棄し「対話」によって問題解決を図っていくとの理念を掲げた。そんなオバマノーベル賞選考委員会も含め世界中の多くの人が期待をかけた。


そんなオバマが引き続きイスラム指導者の暗殺作戦指示をしていたことにまず驚いた。思想は大きく異なれど非常に大きな影響力を持つ指導者をよその国の政府に無断で作戦決行し遂に殺害した。


オバマは変質してやいまいか。


オバマは「Justice has been done」と言った。


ならば大量破壊兵器所有の事実が無い中でイラクに侵攻し国中を破壊し多くの市井の人々を殺したことに対する「Justice」を受け入れる覚悟はあるのかね。Wikileaksで暴露されたような遊び感覚でイラクの一般市民やロイター記者を狩猟する若い米軍兵士やそれに発砲許可を下していた軍あるいは国への被害者の「Justice」はどうなのか。迫害されるパレスチナの民衆への「Justice」はどうなのか。これもWikileaksによる暴露だが2004年から2009年までのアフガン戦争での被害者数は敵性戦闘員=1万5506人、アフガニスタンの一般市民=4232人、アフガニスタン国軍=3819人、NATO軍(米軍含む)=1138人だという。殺したアフガニスタン人の5人に1人が一般市民だったことへの「Justice」はどのようになされるのだろうか。実際には敵性戦闘員の中にも多数の一般市民が混ざっているだろうから事態は更に悪いはすだ。


人間の盾となった女性も含めて殺したという。米国は応戦してきたので止む無く殺害したとしているが、最初から殺害を目的としていた作戦だったとの声もある。オサマの墓地を聖地化させないために水葬にしたという話もある。対立を融和させるには程遠い一方的な幕引きに恐ろしさを感じる。


オサマの肩を持つつもりはない。911は無差別テロであったしその罪は問われるべきだ。困難なのは想像に難くないが、中東のどこかで国際裁判なりを開いて処罰すべきではなかったか。報復措置としての無差別テロはイスラム法においても許容されることではないといった点を明確にして、サウジアラビアアラブ首長国連邦パキスタンなどのテロを認めない立場をとるイスラム国連名の元で処罰を下す形には持っていけなかったのか。昨今のアラブの民主化運動で不安定さを内包している情勢だから、各国とも避けたがるに違いないがイスラム諸国は無差別テロを思想や宗教の問題解決手段としないとのメッセージを明確化できないものか。テロを根絶するのが目標であるならばどちらが果たして効果的か。


昨今のオバマの支持率は芳しくない。次の大統領選を控え人気取りに走った側面はないだろうか。国際法廷で争えばオサマによる弁明を聞かねばならないし米国に完全に筋が通っていないところも指摘されるだろう。オサマによるプロパガンダの場にもなりかねない。しかしそれも致し方無いのではないのか。双方の言い分に耳を傾けることが対話なのだから。非武装の宗教指導者を問答無用で射殺しているのだからその点で米国は法治国家であることすら放棄している。


自らが正義であると妄信しているオバマと神の教えを実践していると妄信しているオサマとなんだか似たり寄ったりに思えるのだよ。


米国が非を一切認めずに閉幕したいことにそもそもの問題が無いか。一方的に断罪し処刑した。遺体を引き渡すこともなく独断で処分し闇に葬った。対話の余地など微塵も残していない。政治素人の表面的な意見に過ぎないかもしれないが、やはりイスラム諸国の人達が受け入れられるような理解しやすい「理」が示されないと事態は収束しないのではないかね。


イスラム世界は好きだ。トルコに1年ほど住んでいたこともあるし、シリア、ヨルダン、レバノン、モロッコ、エジプト、ドバイなんかも訪れた。イエメン、イランなど他にも訪れたい魅力的な国々はあるが治安が悪化して取得したビザは使われないままだ。平和のうちに訪れられる日はなかなか来なさそうだ。