陶芸教室の釉薬による差別化

先生の作品はいかにも陶芸というふうに複雑な発色の深い色や金属光沢の混じったものが多い。同じ釉薬が使えるかと聞くとそれは先生が特別に調合した釉薬なので使えないという。


陶器における釉薬が外観上与える視覚的効果は非常に大きい。初心者生徒に使える釉薬は単色でのっぺりとしていかにもガラクタな感じに焼き上がるものが多い。造形の不味さは時に味わいがあるなどといって自分を慰められるが、色の安っぽさは取り繕えない。


鉄やらマンガンやら金属光沢のある釉薬を自由に使わせて貰える陶芸教室はないものか。形は歪でも渋い色に焼き上がる。そんなところがあればもっと陶芸愛好素人は増えるのではないか。陶芸教室も潤うのではないか。なぜ生徒が使える釉薬が限定的なのかいくつか理由を考えてみた。

  • 焼成温度管理が難しい。複雑な釉薬は期待する色を出す為の焼成温度の範囲が狭いものもある。また、他の陶器と異なる焼成温度の釉薬を使ってしまうと困るということも考えられる。しかし通いの素人にとって窯焼きは全て先生任せだ。よって素人が温度調整をしくじって台無しにする恐れはない。焼成温度さえ他の釉薬と同じであればより多様な釉薬を使わせること自体は可能ではないだろうか。
  • 売り物と職業陶芸家の保護。陶芸はプロとアマチュアの境界線がとても曖昧な世界だと言われる。陶芸家は大抵独自の釉薬を研究しており、それが作家作品の個性や希少性、ひいては市場価格に繋がる。よって秘中の釉薬を素人が自由に使えると相対的に作家作品の価値が下がるのではないかと。
  • 成功率の低さ。複雑な成分構成の釉薬ほど期待通りに発色させるのが難しいという。同一品を複数作り、出来の良いものだけを残すような遣り方は素人には技術的にも金銭的にも難しい。たった一つの作品が失敗した場合にそれを納得してもらうのは時に難しいかもしれない。


経営という観点では素人でも見栄えのする釉薬の使える陶芸教室というのは大きな差別化要因になるのではないだろうか。窯として成功率の高い複雑な色味の釉薬を開発し、それを売りにするのだ。うちの陶芸教室では他では使えないこんな渋い、重厚な、美麗な釉薬が使えますよと。そんな窯があるなら小生は選ぶ。多少遠くとも。まあ、あとは値段との相談ではあるが。