御朱印貼を広げてにんまり

東京から友人が遊びにきて、数日我が家に宿泊していった。


彼は寺社仏閣巡りや御朱印集めを愛するその年代ではあまり見かけない趣味をもった人で、普段自分も他の人に言うのが憚られるそれら趣味を一緒になって堂々と行えるものだから有難いものだ。彼とは東寺で待ち合わせ。早速、彼が東寺で参拝するや、9つの御朱印を全て頂いているのを見ると同じ穴の狢の匂いを感じる。東寺の御朱印は梵字が書かれている点で珍しく、東寺は幾人かいる御朱印を書いて下さる方がどの方も非常に達筆ではずれがない。信仰ありきで御朱印なら何でもいいから書いてもらいたいというわけではなく、デザインが美しいものを求めている点、そしてそれに数千円気にせず払える点など中途半端さや志向も似通っているのがそれだけでわかる。


夕食は芸術大学を出て仏画を描く傍ら扇屋で絵付けをしていると20代の子と、大学から委託されて曼荼羅を描いたり東寺五重塔の修復などを手掛けているというこれまた20代の若い子と、御朱印集めの彼に嫁さんと自分を加えた五人で山奥の蕎麦懐石屋で食事をした。その若さで高い専門性と自分の仕事への自負のようなものが時々垣間見えて感心する。なかなか聞く機会のない分野なので非常に刺激的だ。しかも普段は肩身が狭いのだが、今日は嫁さんが話題について来られないという逆転した現象で何やら気分が良い。


その後は皆で家に帰ってしばらく飲みながら話していた。女性陣が帰った後は友人とお互いの御朱印貼を床に開陳して、「やはり東寺梵字は良い」だの「どこそこ寺のは真中に芯が通っていてバランスが良い」だの「西芳寺のは僧侶の横顔の絵入りで非常に珍しい」だのと論評会となった。嫁さんは「もうついていけない」と言ったのか、「もうついていかない」と言ったのか記憶が朧だが早々にうちらを残して2階に寝に行った。御朱印に惹かれる二人に引く嫁。


こうして写真を見て振り返るとなんか外国人から見たら新興宗教儀式か呪術的な何かに見えるかもな。世間常識からすると深夜に印を並べて嬉しそうな三十路男二人ってやはり歪んでいる。でもそういうものこそ面白い。また遊びに来てくれんかね。御朱印ワールドを展開しに。


一緒にいた数日で彼は15ほどの新たな御朱印を収集していた。