かがり吉祥亭


去年付与された有給休暇の半分も使えていなかったので年末に2泊で山中温泉かがり吉祥亭に泊まることに。京都から2時間かけて訪れた宿で通された九階の部屋で眼前に広がっていたのは、一面の冬山だった。冬は森羅万象の形状が美しい季節。冬もまた良いものだとつくづく思う。



松尾芭蕉が俳句に詠む数百年昔からある伝統ある湯処だったらしいが、昭和の頃には芸妓の呼べる男性向けの温泉街として発展し、その後、廃れていったらしい。泊まっている「かがり吉祥亭」も経営会社が倒産し、しばらくしてから県外の資本が旅館として再生させたそうな。



大人数で温泉旅行に来て芸妓を呼んで宴会をやる時代ではなく、家族や恋人同士の時間を楽しみに来る時代に合わせて温泉旅館も造り替えられることで山中温泉は再生されたようだ。自然景観と温泉の価値は普遍的で、それ以外を時代の変遷に対応させていけば幾度でも甦るのだろう。



陽が暮れても雪の白さで空ほどに暗くならない。部屋の電気を消して、窓際に座り、その静かさと凛とする寒気を楽しんだ。



来年は日本も欧州も小生自身も「再生」の一年となりますように。