立憲君主制下での王も20世紀に入ると大した政治的権力も持たず、国民の前で演じる役者。王族はもはや最も卑しい身分に成り下がった。そんな王族による自嘲的台詞が繰り返される。
ジョージ6世は体が弱く、幼少期の乳母からの虐待や厳しい躾の心的ストレスによる重度の吃音を持つ。海軍士官学校でも成績は最下位だったという。それが享楽的で奔放な兄が離婚歴を持つ女性と結婚する為に王位を捨てたことで、英国王位を継ぐ破目になる。ナチスドイツとの戦争に突入する時代背景のなかで、重責に立ち向かい、吃音を克服し、国民を鼓舞していくまでになる。
史実でもけして疎開することなく、頻繁に戦場を訪問して慰労し、善良王と呼ばれた。そして過労から52歳の若さで亡くなっている。一般的な尺度では彼は優秀ではなかった。しかし生真面目で誠実ではあったらしい。そして、そこらの優秀な人達には成し得ない国民の精神的支柱としての役割を見事全うしたわけだ。
克己。観て後悔しない良作。
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